novel | ナノ

もらったばかりのレインボーバッチは7色に反射して、すごくきれいだった。

そもそもバッチはどれもきれいで、だから集めてる人もいるくらいなんだけど、タマムシシティではやっぱりレインボーバッチの注目度が高いみたい。

ちゃぽちゃぽと涼しげな噴水の音を聞きながらそれを眺めていたら、何人もの人に声をかけられた。日々弱くなっていく日差しにも、跳ねる水とバッチはきらきら光る。


「いい勝負だったねーバクフーン」
「………ぐぅ」


思い出しながら隣に座る相棒に尋ねたら、あろうことか相棒は心地よい気温とやさしい風の中でうつらうつらしていた。

タマムシジムは草タイプのジムだったからバクフーンは大奮闘してくれたんだ。ダメージは少なかったけど、やっぱり今日はポケモンセンターでゆっくりしたかったのかもしれない。デパートに行きたいと無理を言ったのは私で、相棒はそれに付き合ってくれた。

ありがとう、と心の中でつぶやいて、私はバクフーンをボールに戻し、バッチをバッチケースにしまって立ちあがった。買い物はひとりでもできる。

よし、ジムでたくさんお金は入ったから、自分とバクフーン、ピジョットへのご褒美と、ポケモンフーズを買おう!

決めたところでふと、バッチをくれるときにもふんわり笑ってくれていたジムリーダーのエリカさんが、ジムを出るとき、急にバトルのときのような真面目な顔で言ったことを思い出した。


『大きな声では言えないことなのですけれど、最近、またタマムシシティにロケット団がといううわさが流れているのですわ。十分にお気をつけくださいね』


ロケット団、という言葉は、ラジオ塔と合わせてジョウトでは比較的最近の話題だったけど、発祥の地らしいカントーでは過去のことらしい。

詳しいことはしらないけど、ヒビキが倒したから大丈夫だよと言ってた気がするのに。

そういえばレッドさんも、過去に旅したことがあったはずだから、もしかしてロケット団のこと知ってるのかもしれない。レッドさんの幼なじみだから、グリーンさんも。

今日の夜に電話してみようかなと思ったけど、まだレッドさんの故郷の町が分からないのを思い出して、やめた。あれ以来、私はレッドさんと話してない。

グリーンさんに電話するのも、この前一方的に切ってしまったからはばかられる。

困ったなぁ、と思いながらとりあえずもエスカレーターで上に登る。デパートは広くて、そして百貨店よりも落ち着いた雰囲気だった。
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