どきどきと心臓が早鐘を打っている。 ここは公園。それも、ラルースという大都市のど真んなかにあるひろい公園。それはなによりリュウさんが知ってるはずなのに、緊張は私にもたしかに影響していた。 がさがさっ、ざざっと音が近くなるにつれてバシャーモは身構えるし、リュウさんは私を引き寄せてかばおうとしてくれる。 そしてついに、はじけるような光とともに何かがぽんっととび出してきた。 「ぷーら!」 「まいまーい!」 いきおいよくバシャーモにとびついたちいさなふたつの影が、びっくりするくらい聞きなれた鳴き声をあげるから、私は目を見ひらいた。 ぱちん、とふくらみ切ったふーせんガムが割れるように緊張がとけ、となりでリュウさんが呆れたようにちいさく息を吐く。 振り返ったバシャーモの腕のなかで、いたずらが成功したプラスルとマイナン、そしてヒトカゲまでもがきゃらきゃらと笑っていた。 「…まったく…」 「しゃも」 つぶやいて肩を落としたリュウさんの真似をするように、バシャーモも肩を落とす。うれしそうな小さいポケモンたちを抱えてのその仕草はやっぱり、リュウさんに似ている。 そう思ったらおかしくて、失礼かもしれないと思いつつも口もとがゆるんだ。 「だからきみはさっきから、何がおかしいんだ?」 「あ、いえ、何でもないです!」 「何でもないのに笑うのか?変わった子だな」 あわてて隠したつもりだったのに見破られてしまったのは仕方ないかもしれないけど、めずらしいポケモンを見るような目でじっと見つめられると、サファリパークのラッキーにでもなった気分…。 「お兄ちゃん、こんなところにいたのね」 「ほら、ちょっと来なさいよトオイ!」 「オードリー、あんまりひっぱるなよ」 ばたばたと、今度は向かう先のほうから足音と大きな声が聞こえてきた。 私、リュウさん、そして4体のポケモンたちがふり返るのはほとんど同時で、だから目が合ったのは気のせいだったのかもしれない。 リュウさんが、そしてオードリーちゃんがみじかい単語を発してうごきを止めるのも、お互いに凍りついたようにお互いを見つめあう固い空気にも、私はぜんぜん気づかなかったくらいだから。 「…お兄ちゃん…?」 ぽつりとキャサリンちゃんが落っことしたことばが空気をゆらして、その波紋がうごきを鮮明にする。 しっかりとつながれたトオイくんの手。見ひらいた薄氷のひとみと、今度はしっかりと目が合った。私の身体が、リュウさんの腕のなかでびくり、と跳ねた。 110526
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