「一息いれようか」 リュウさんが真剣なひとみを解くのと同じタイミングで、ヒトカゲと対峙していたバシャーモは戦闘態勢をくずした。 連携のとれているふたりの様子に思わず見とれながら、私は乱れた息を早くととのえたくて腕を抱える。 「か、げっ…?」 「しゃも」 「大丈夫か?」 同じように肩で息をするヒトカゲに、バシャーモが気遣うように問いかけるのを見ていたら、いつの間にか目の前に来ていたリュウさんが手を差し出してくれた。 もしかして、まともに歩けそうにないのを見抜かれてるのかな…だとしたら、すごく恥ずかしい。 はからずも顔に血が集まるのを自覚しながら見上げたら、目が合ったリュウさんは思いのほか真剣な顔をしていた。 「今のバトルで反省すべき点があるとすれば、きみが指示していた回避についてだよ。わざを避けることは大切な戦法のひとつだが、わざを受け止めることもまた戦法のひとつだ」 「わざを受けることも…ですか」 「そう。特にヒトカゲは、そうすることで特性を生かせたりもするだろうし」 …とくせい…? 思わずきょとんとしたのが顔に出てしまったみたい。真剣だったリュウさんの表情がくずれた。 「あ…あの、すみません!」 「いや、初心者なんだから仕方ないさ」 せっかく教えてくださってたのに!怒られるかと思ってあわてて表情を引き締めなおした私の頭を、リュウさんは差し出してくれていた手でぽんぽんとたたく。 下から見えたリュウさんの口元はたしかにゆるんでいて、ひとみはふんわりとやさしかった。…やっぱり、ショウタさんの言ってたことはうそに決まってる。 「でもこれはやり直しだな」 「握手…ですか?」 「これは礼儀だと僕は考えているんだ」 あらためて差し出された手はトオイくんより大きくて、すこし冷たく、かさついていた。 「ありがとう。いいバトルだったよ」 「ありがとうございます。リュウさんはさすがでした!」 生まれて初めてのバトルを終えて、ちょっと誇らしい気持ちでふり返る。ヒトカゲとバシャーモも真似して握手をしているのを見て、私とリュウさんは思わず笑ってしまった。 110423
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