「やあ、きみがトオイのつれてきた女の子?かわいいなぁ」 「ショウタ…、トオイが紹介するまでくらい待てないのか?怯えているじゃないか」 「そうですよショウタさん、お兄ちゃんの言うとおりです!」 「うへ、怖いなあキャサリンちゃんは。なあ、トオイ?」 肩をすくめた中背のお兄さんは、女の子に怒られてもからりと笑ってトオイくんに話しかける。 みんな笑いながらトオイくんに目を移すから、さっきから浴びどおしだった視線が反れてほっとした。もしかしたらショウタと呼ばれたひとはそれに気づいていて、気をつかってくれたのかもしれない。 私もとなりにいたトオイくんに視線を移すと、トオイくんは相変わらずですねと楽しそうに笑っていた。 「ちゃんと紹介しますよ。なまえです」 「よろしくお願いします」 トオイくんに目でうながされ、私はぺこりとお辞儀をした。つづけてトオイくんは、私がカントーから引っ越してきたこと、お父さんがトオイくんのお父さんの部下なことをさらりと説明してくれる。 私のせいで落ち合うまで待たせてしまったのに、みんなやさしくてちっとも怒らず、それどころか心配して、気までつかってくれて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 「なまえちゃんね。オレ、ショウタっていうんだ!」 「僕はリュウ。サウスシティからよくバトルしに来ているんだ。それからこちらは妹たちで…」 「もう、お兄ちゃん!自己紹介くらい自分でできるから!」 「私はキャサリン、こっちで騒いでいるのがオードリーよ。よろしくね、なまえちゃん」 「ああっ、キャサリンまでっ!」 もうー、と怒っている女の子のかたわらで、にっこりと笑いかけてくるおんなじ顔の女の子。双子だけど、性格はぜんぜんちがうみたい。 こちらこそよろしくね、とすこしぎこちなくでも口角をあげようとしたら、間髪を入れず視界を遮って私の目の前に出てきたのは、 「…ショウタ、さん…?」 「なまえちゃん、カントーから来たって?」 「え…、はい」 うなずけば、ショウタさんはまじまじと私の顔を見ながらうなる。 その眼差しが真剣なもので、私はどうしたらいいのかわからずに2、3歩後退った。 「ショウタ、また怯えさせているよ。…さて、自己紹介も済んだしそろそろ場所を移ろうか」 「やったぁ、お昼ね?行こうキャサリン、なまえちゃん!」 そんなショウタさんをたしなめるようにリュウさんが発した声にいち早く反応したオードリーちゃんが、ぱっと身を翻して先手を切った。 すごい、さっきまでむすっとしてたのに、もうあんなに元気…。いっしょに歩きだしたプラスルとマイナンに連れられて、ヒトカゲももう歩きだしている。 行こう?とキャサリンちゃんにうながされて、私はふたりでオードリーちゃんを追いかけた。 110411
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