novel | ナノ

うわさのトオイ兄ちゃんその人は、優しそうな…ちょっと儚い印象を受ける美少年だった。

あんな元気いっぱいの男の子たち従えてるのがこんな、私とそう変わらないような年の、しかもこんなに弱々しい子…人は見かけによらないって本当だったんだ…。

トオイくんは見た目どおり優しくて、ずいぶん流されてきて家がわからなくなってしまった私のために、新しい入居者の名簿を取りに行ってくれた。

なのに失礼なことを考えてる私の膝に、ぴょんっとマイナンが跳び乗った。

この子は、また迷子にならないように、とトオイくんが置いていったお留守番役で、さっきから公園のベンチに座ったままの私に引っついている。


「…どうしたの?」
「まいっ!」


首をかしげて尋ねたら、マイナンはぐっと身体をのばして私の頭をなでなでしてきた。リーチが足りなくて、前髪をさらさらとゆらすちいさな手がかわいい。


「ふふ、くすぐったいよ」
「まーい、まい!」


どうやら迷子になった私を慰めてくれてるらしい。この子もトオイくんと同じように、優しい子だ。ポケモンはトレーナーに似るっていうの、あながち間違いじゃないのかもしれない。


「マイナン、あなたはいい子だね」
「ま〜い」


思わずゆるんだ頬が強ばってることに気づいて、ようやく私はずっと固まってたんだと自覚した。来たばかりの街で迷子になって、心細くないはずがなかったんだ。


「遅くなってごめんね。いい子にしてた?」
「……、え?」
「え?…あ!いや君じゃなくて、マイナンが迷惑かけなかったかなって…」
「あ、う、うん、大丈夫」
「まいっ」


膝に乗ってたマイナンが、今度は戻ってきたトオイくんに飛び付く。うわっ、とか言いながらよろけたトオイくんの頬が赤くて、元々色が白いせいかそれが女の子みたいで、かわいいななんて思ってしまった。

トオイくんの両肩の上で、マイナンとプラスルが再開を喜んでいる。


101130

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