Kissして | ナノ





「そなたには今日からこの氷帝城の城主であり、跡部家当主の景吾様に仕えてもらう」

『はい、父上から聞かされております。』


私の名前は高倉幸。

我が高倉家は代々跡部家に仕えていて、ついに私も景吾様の侍女として仕える事になった。


そして、今日が景吾様との初対面の日だった。


『……失礼致します』


「入れ」


『高倉家長女の幸と申します。どうぞよろしくお願い致します。』


「………幸、か。じゃあさっそく今夜、俺の自室へ来い。」


『はっはい。

……では失礼致します』





パタンっ


思わず見惚れてしまった。お若いとは聞いていたものの、まさかあんなに美男子な方だとは思ってなかった。


『あんなに素敵で当主なんて凄い方……』


その後何をやっても景吾様が頭から離れなかった。


“今夜、俺の自室へ来い”


その言葉を思い出しては外を気にするばかりだった。

そしてやっと訪れた夜。

私は忍び足で景吾様の自室へと急いだ。



『景吾様、失礼致しま……きゃぁっ!』


「待ってたぜ幸」


部屋の襖を開けると、突然景吾様に抱き締められてしまった。

景吾様と私は主従関係。恋愛なんて持っての他。

なのに、その時私は不覚にも自分の心音を静めることが出来なかった。


『景吾様っ、お離れください!』


「……あーん?侍女が当主に命令してんじゃねぇよ」

『申し訳ありませ…んっ』


くちゅ



『んっ、ふっ…はぅ、』


「………へぇ、お前良い女じゃねぇか」


『………っ!?』


突然の事で何が起きたのか分からなかった。

でも、

唇に残る熱と、口の中に広がる甘い味が私と景吾様が接吻を交わしたと言うことを気付かせた。



『あっあの、……』


「着物を脱いで布団に入れ」


着物を、脱ぐ?

私の聞き間違い?

でも、確かに景吾様そう言った。


“今夜、俺の自室へ来い”

あの言葉の意味が、今やっと分かった。


『お待たせ致しました…』

「ほぉ、俺は素直な女は好きだぜ。幸、今夜は楽しませてくれよ?」


あの言葉の意味は、


“俺の夜の相手をしろ”


つまり私は、景吾様にとって遊女同然の存在なんだ。

跡部景吾。


私はこの方の侍女になってしまったことを、張本人に激しく抱かれながら後悔した。


091103.
110908.改正


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