「ふわぁ…」
大きなあくびを手で隠す。それを見ていた青子に『寝てないの?』と心配された。
「はい、少し」
昨日の仕事で邪魔が入った。身体だけが小さくなった探偵、江戸川コナンくんによる邪魔が。
以前にも増して捕まえる気満々な彼から逃げるのに体力を使ってしまい、朝方に帰ってきたためあまり寝ていなかったりする。
「快斗に助けてもらわなかったらどうなっていたことか…」
「え?」
「あ、いえ。なんでもありません」
不思議そうにする青子に笑って誤魔化す。それと同時に先生がやってきたので彼女は自分の席に戻っていった。
「なまえ、帰ろうぜ」
放課後、快斗がカバンを手にしてやってきた。教科書をしまいながら『はい』と頷く。するとポケットに入れていた携帯が震えた。ディスプレイには“お母さん”の文字。お母さんから電話がかかってくるなんて珍しい、と思いながら通話ボタンを押した。
「はい」
『なまえ!大変よ!』
「大変…?」
『旅行しててさっき帰ってきたんだけど、どうやらアキラさんがそっちに行ったみたいなの!』
「………え?」
『しかもなまえが銃に撃たれたことも知っちゃったみたい』
サァッと血の気が引いていくのが分かる。それを見た快斗が心配そうに覗き込んできた。
『とりあえずお母さんもすぐに向かうから!それまで我慢して!』
「う、うん…」
じゃあね、と言葉を残して電話が切れる。
「どうした?」
「…実は」
「なまえっ!」
説明しようと口を開いたと同時に教室のドアが勢いよく開く。そこには今一番会いたくない人が息を切らして立っていた。
「…見つけた」
その言葉に教室がざわつく。だが彼はそんなの気にしないでずんずんと私に近づいてくる。
「会いたかったよ、なまえ」
「わ、私は会いたくなかったです」
「つれないこと言わないで。さぁ僕と一緒にいこう」
彼は私に向かって手を伸ばしてくる。だがそれは私に届く前に快斗に掴まれた。
「なまえに触んな」
「…君は?」
「黒羽快斗。なまえの彼氏だ」
ピクリと眉が動く彼。顔がひきつっている。
や、やばい…!
「……なまえ?これはどういうことかな?」
「それは…」
なんて言おうか迷っていると、快斗は彼の手を振り払って私を引き寄せた。
「だから、彼氏だって言ってんだよ」
「……………」
ピリピリとした空気を察したクラスメイト達は動くことさえせずに私たちを見守っている。
「彼氏、ね。僕は認めないよ」
「誰もあんたに認めてもらおうなんて思ってねぇ」
「へぇ、それは凄いね」
彼は一瞬の隙をついて私を引き寄せる。そしてその腕の中に閉じ込めた。
「父親の承諾なしで付き合おうだなんて」
「……はっ?」
快斗だけでなく、クラスメイト達も目を丸くした。
「みょうじ明、僕はなまえの父親だ」
お父さんはふんっ、と鼻を鳴らして私を抱き締める力を強めた。
会いたくない人
(く、苦しい…)