「お、お話って?」
うっすらと汗を浮かべるコナンくん。そんな彼に微笑みながら手を取った。
「とりあえずトイレまで案内しますね」
「あ、ありがとう」
それっきり私たちの会話はない。手を繋いでただ廊下を歩いているだけだ。
「…はい、着きましたよ」
しばらく歩いてトイレに着いた。彼は急いで手を離してもう一度私にお礼を言ってからトイレに駆け込んだ。
「お嬢様、如何なされました?」
ふと佐伯の声が聞こえてきてそちらを見ると彼の手には大量のゲームのカセットがあった。
「少し話したいなって」
「…お嬢様、いくらなんでもトイレを待ち伏せするのは如何なものかと」
「別に平気よ」
「お嬢様」
「…分かったわ」
佐伯は色々とうるさい。彼に口答えすると延々と『みょうじ財閥のご令嬢である自覚を…』とか『少しは女性らしく…』とか説教される羽目になる。なので私は大人しくこの場を離れることにした。
「コナンくん、帰りは大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だよ!」
その言葉を聞いて私は一先ず佐伯とリビングに戻ることにした。
「うおー!」
「すごーい!!」
お夕飯の時間、テーブルには彼らの好物が所狭しと並んでいる。
結局トイレから帰ってきたコナンくんに話しかけるタイミングが見付からず、私は目を輝かせている子供たちを見た。
「これ全部頂いてもいいんですか?」
「もちろんです。おかわりもありますのでどんどん食べて下さいね」
子供たちは元気よく『いただきまーす!』と言い、料理に箸を付け始めた。
「お前らがっつくなよ…」
「そうですよ。たくさんあるんですからゆっくり食べて下さい」
「だーいじょうぶだって…うぐっ!!?」
「元太くん!!?」
隣に座っている彼に水を渡して背中をさする。彼はひったくるようにして水を受け取り、一気に飲み干した。
「っ、ぷはー!し、死ぬかと思ったぜ…」
「慌てて食べるからだよ」
歩美ちゃんは心配そうに元太くんを覗き込んでいる。彼は照れたように笑って頭を掻いていた。
こんなに賑やかな食事は久々かも。
「ふふっ」
つい笑みを溢してしまう。そんな私を子供たちが不思議そうに見ていた。
「あ、ごめんなさい。今まで1人で食べていたから楽しくて」
佐伯とは同じ時間に食べることはない。私が食べてる隣で待機をして料理を取り分けたりしているから。
「なまえお姉ちゃん…」
子供たちは一瞬悲しそうな顔をして、お互いに頷き合っている。そんな様子をコナンくんと私が眺めていると、彼らは持っていたナイフとフォークをテーブルに置いた。
「なまえお姉ちゃんが寂しい時はいつでも連絡してね!」
「俺たち少年探偵団が遊んでやるからよ!」
「これも僕たちの仕事です!」
意気込む子供たちに初めは目を見開いていたが、彼らの心遣いがすごく嬉しくて笑顔で頷いた。
お話の前に
(こんな可愛いお友達が出来て私は幸せ者ね)