「あ、園子、今大丈夫ですか?」
『授業終わったところよ。何?』
子供たちをリビングで遊ばせて(テレビゲームをやっている)私はこっそり園子に電話をかけていた。
「新一くんがいなくなったって聞いたのですが…」
『あぁ、蘭とトロピカルランドにいった日にいなくなったみたいよ。どうせ事件でどっかに行ったんでしょ』
「そうですか」
園子も事情を知らない。これは本当に事件でどこかに行ったのか、それとも嘘をついているのか。
「では、江戸川コナンくんを知っていますか?」
『江戸川コナン?あぁ、蘭のところにいるガキんちょね。って何でなまえが知ってるわけ?』
「この前散歩をしていて仲良くなった男の子なんです。蘭ちゃんの名前が出たのでお知り合いなのかと思って」
へぇ、と納得した様子で園子は続ける。
『なんでも知り合いの遠い親戚らしいわよ。工藤くんと入れ違いでやってきたとか』
「入れ違い?」
『そ。しかもそのガキんちょ、工藤くんのこと知ってるらしいのよ。まぁ博士の遠い親戚みたいだから遊んだことがあるんだろうけど』
博士、と聞き慣れない言葉が出てきたが気にしないことにした。
『あたしよりも蘭が詳しいから代わろうか?』
「あ、いえ。十分です。ありがとうございました」
『どういたしまして』
別れを言って電話を切る。そして壁に身体を預けた。
ぐるぐる回るいろんな言葉を整理することにした。
新一くんはトロピカルランドで行方不明になった。
そして現れたのが江戸川コナンくん。
普通の子供とは違って大人びている、いや、大人びすぎている彼は新一くんと似ていて。
「……何かの事件に捲き込まれた?」
ありえないとは言い切れない。彼のことだ。何か事件のにおいでも嗅ぎ付けて首を突っ込もうとしたら捲き込まれた。
「なまえお姉ちゃん?」
はっ、と声が聞こえた方を見るとそこには不思議そうに私を見るコナンくんがいた。
「どうしたの?何だか深刻そうな顔してるけど」
「…いえ、大丈夫ですよ。それよりどうしてコナンくんがここに?」
「トイレを借りようとして佐伯さんに聞いたんだけど迷っちゃって…」
えへへ、と恥ずかしそうに笑う彼の表情は子供のそれで。でも何だかわざとらしい。
「…ねえ、コナンくん」
「なぁに?」
大きな目で見上げるコナンくんに、私はにっこりと微笑んでみせた。
「少しお姉さんとお話をしない?」
「え?」
大きな目をさらに大きくさせて彼は一歩後ろに足を動かした。
「あの、でも僕トイレ…」
「行ってからでいいわ。どうしても貴方と話したいの。工藤新一くん」
「……………っ!」
彼の、新一くんの息を飲む音がはっきりと聞こえた。
その正体は
(…動揺した)