「え、合同練習ですか?」

放課後、しばらく通う事になった体育館に向かうと、顧問の先生がが目を輝かせて話しかけてきた。

「そうなの!向こうの先生の耳にみょうじさんの事が伝わったみたいで、是非ともご一緒にって」

なんだって他校にまで私の噂が…。

くらっとする頭を手で抑え、息を吐く。

「やっぱり先生も生で見たいのよ!賞を総嘗めしたみょうじさんを」

昔、といっても数年前だが、これまたお母さんの影響で始めた新体操で色んな大会の賞を総嘗めした経験がある。まぁこれはブラックとして活躍するために役立つと思って始めたのだが。

特に話す事でもないし黙っていたのに…一体どこから漏れたのだろう。

「それで急なんだけど、明日の土曜日って大丈夫かしら?」

「明日ですか?…はい、何もなかったと思いますが」

「そう、良かった!」

嬉しそうに微笑む先生に、私は曖昧に笑って返す。

良かった。予告状の日付を今日の夜にしないで。

「それで、どちらの学校なんですか?」

「帝丹高校よ」

帝丹高校…?

聞いた事がある名前に必死で頭を回転させる。

誰かがいたような…。

「さ、お話はこれくらいにして練習を始めましょう!」

先生が手を叩いてくれたおかげで思考が吹っ飛んだ。

まぁいいか。別に問題があるわけじゃないし。

そう思っていたのに、その考えは見事に打ち砕かれる事になる。




*****




「あれ、快斗」

着替え終え、帰ろうと体育館を出ると彼が待っていた。

「よっ」

「待っててくれたの?」

「まーな」

恥ずかしそうに鼻の頭を掻く快斗に顔の筋肉が緩む。

「青子は?」

「アイツなら友達と帰ったよ」

「…そう」

また気を遣わせちゃったな。

「……帰ろうか」

「あぁ、そうだな」

肩を並べてゆっくりと足を運ぶ。少しでも一緒にいたくて。

「そういや最近、迎えの車見ねーな」

「あぁ、佐伯に言って止めてもらったの。健康のためにって」

本当はウソ。歩けばもっと快斗と居られるから。だけど絶対に言わない。だって恥ずかしいもの。

「それにしても驚いたよ。まさかなまえが新体操できるなんて」

「まぁね。思いっきりお母さんの影響ですが」

「でも、演技してる時のなまえ、すっげー楽しそうだぜ?」

笑って言う快斗に、私は目が点になった。

「え、分かるの…?」

「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだ」

胸を張って言った快斗に、私はぷっと吹き出してしまった。

「…なんだよ」

「いやいや、なんでも」

すごく嬉しかった。私の事を見てくれてるんだなって思ったら恥ずかしくなって。だから笑って誤魔化した。

「……あのさ、なまえ」

「んー?」

「今度デートしよう」

ざぁっと風が吹き抜けていく。たぶん、いや絶対、顔が真っ赤になってる。

「う、うん」

「約束な」

「約束…」

差し出された小指と快斗の顔を交互に見た後、そっと自分の小指を絡ませた。



伸びた影、絡む小指
(初めてのデートだ)
(き、緊張したー…)



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