彼は靴を鳴らして近づいてくる。私は彼からブレーカーが見えないように背中で隠した。

「貴女が確認しなくてもそこはもう警察が調べましたよ?」

「え、えぇ…ですが念の為に調べました。やはり何も異常はありませんでしたわ」

平静を装ってニッコリと微笑む。

落ち着け、落ち着け。いつものようにしていれば大丈夫だから。

「そうでしたか。いやー、だったら言ってくれれば付き添ったのに」

「心配には及びませんわ。これでも武術には長けている方ですから」

ウソだ。武術の武の字も出来やしない。私が出来るのは新体操くらいなのだから。

「そうですか。それは心強い」

コツコツコツ。彼の靴音がやけに響く。ぎゅっと握った手は緊張からか汗ばんでいた。

「ですがおかしいですね」

「何がでしょうか?」

心臓がうるさい。新一くんに聞こえているんじゃないかという程ドキドキと脈打っている。

「確認ならなぜ電気をつけないんですか?」

ドクッと心臓がより高鳴った。視線を泳がさないように新一くんをじっと見つめる。

「旦那様には内緒で見回りをしていたんです。不安で不安で仕方なくて、もし旦那様に言ったら私如きが確認しなくても警察の方々がちゃんとして下さったと叱られると思いましたので。電気をつければ旦那様にバレてしまう。なので私は誰にもバレないように電気をつけなかったんです」

早口にならないようにゆっくりと話した。新一くんは顎に手を当てて考えた後、ニッコリと笑って頷いた。

「そうだったんですか。では私も今見た事は忘れます。そろそろ予告の時間になるので一緒に参りましょう」

「…はい」

差し出された手を握り、私は彼と共に階段を上っていく。ほっと力が抜け、今にも倒れそうだ。

「………では私はこれで。工藤様、頑張って怪盗キッドと怪盗ブラックを捕まえて下さいね」

「えぇ、ありがとうございます」

そして私は彼から逃げるようにその場を立ち去った。

「…使用人には話していないはずなんだよな。ブラックについては」

そう言った彼の言葉は私の耳に届かなかった。



*****



「…これで全部オッケー」

全ての仕掛けを屋敷内に施し、後は時間が来るのを待つだけだ。腕時計に目をやると時間まで後少し。私は辺りに誰もいない事を確認してカチューシャをとり、服を脱いだ。

「そろそろ行きますか」

口の端を上げて、私は仮面を付けた。



さぁ始めよう
(何故かわくわくしてきた)




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