ガラガラと教室のドアを開けると、クラスメイトが一斉になまえに駆け寄る。
「みょうじさん!あの高校生探偵、工藤新一くんと仲が良いの!!?」
「あ、いえ…仲が良いとかではなくて…」
「でもでも!なんか親しげだったよね!」
質問攻めになまえは眉根を寄せていた。助けを求めるように俺を見る彼女にそっと息を吐いて立ち上がった。
「はいはい、散った散った。なまえが部活に行けねーだろ」
彼女を庇うように間に割って入った。クラスメイト達はまだ聞きたそうにしていたが、青子がタイミングよくカバンを持ってきたので受け取ってなまえと共に教室を出た。
「あ、ありがとう快斗」
「別に」
つい素っ気ない態度をとってしまった。慌てて振り返るとなまえは困った顔をしている。
…俺、情けねーな。
「…なまえ、何でアイツの事知ってるんだ?」
「え?あ、新一くんの事?」
新一くん…ね。
いつの間にそんな親しくなったんだよ。
自分の中の黒い感情がぐるぐるする。でも表に出す事はしない。
なまえが怯えるから。
「ほら、一昨日帝丹高校に行ったでしょ?そこに私の友達がいて、その子経由で知り合ったんだよ」
「へぇ…」
「それにしても快斗にそっくりだよね…だから思わず見惚れちゃって」
「はっ?」
それはつまり、アイツに見惚れてたんじゃなくて、俺に似てるアイツに見惚れてたって事か…。
やべ、ニヤける。
なまえから手を離し、口元を隠す。
「それにしても新一くんがあの高校生探偵、工藤新一だったなんて」
「はぁ?知らなかったのかよ」
「いや、どこかで聞いた名前だとは思ったけどまさかとは思うじゃん」
…コイツは。
「しかも私の口調がバレちゃった」
「はぁ!!?バレたって何でだよ!!」
「なんか前に私達とすれ違ったみたいだよ」
そんなのあったか?アイツとすれ違ったりしたら覚えてるはずなんだが…記憶がねぇな。
「気を付けろよ。夜の正体がバレないように」
「もちろん大丈夫。快斗こそバレないでよね」
「おー」
お互い顔を見合わせて笑った。
なまえの笑顔を見ると、さっきまで自分を支配していた黒い感情がスーッと消えていくのが分かる。
やっぱりなまえは、笑顔が一番よく似合う。そう思ったけど口にはしなかった。
彼女の笑顔は特効薬
(言ったらなまえは照れて笑わなくなるから)