「ねぇジン太くん」
「あ?」
店長が留守にしてる間、3人で季節外れの大掃除をしていた。テッサイが店の方でウルルと俺は茶の間を担当。2人で(ほとんどウルルにやらせていたが)畳を箒で掃いているとウルルに呼ばれた。
「これ、なんだろう」
「どれだ?」
ウルルが指差しているタンスの一部が少し開いており、そこから強弱をつけて赤く光っていた。
「…初めて見るな」
「私も」
中を覗くためにもう少し引き出しを開けてみた。すると中にはガラスケースに入ってる紅い珠があった。それはまるで脈を打つように、ドクンドクンと光っている。
「なんだこりゃ」
そのガラスケースに触れようとした時だった。
ピシッ
そのガラスケースは次々とひびが入っていく。
ピシ、ピシッ
「お、おい。こりゃヤバくないか?」
「…うん、ヤバいかも」
やがてそのひびがガラスケース全体に行き渡った。
パリンッ
「わっ」
「きゃっ」
割れた拍子に中の珠が飛び出し、俺達の前をプカプカ浮いている。
「お2人とも、終わりましたかな?」
タイミング良く店の方からテッサイが顔を出すと、それを待っていたかのように紅い珠が外へ飛び出していった。
「む?今のは…」
「テッサイ…さん、あの紅い珠は一体何なんだよ?」
「ビューンッて飛んでいっちゃった」
「……致し方あるまい。お2人とも、出かける準備を」
多くを語らないテッサイに俺達は顔を見合わせた。
*****
「…なん、なんだよ…」
思わず声を漏らさずにはいられなかった。此処に隠れていろと言われるし、ジローは木に括り付けられてぐったりしているし、なまえは何かから逃げ回っているし、俺達には何が何だかさっぱりだ。
「なぁ、岳人…なんやねんコレは」
「…俺が知るわけないだろ」
隣にいる侑士に話し掛けられるが答える事は出来ない。
「……何か変なものがいんだよ」
小さく呟く宍戸にみんなの視線が降り注ぐ。
「見える、んですか?」
「あぁ、はっきりってわけじゃないけどな」
「なまえとジローには見えてたわけだな」
「みたいだな」
ジローが前々から霊感がある事は知っていた。何もない所をじっと見たり話したりしていたから。
じゃあなまえも…?
そう思って視線を彼女に移した時だった。何かがなまえに当たったのか彼女は横に吹っ飛び、フェンスにその身体をぶつけた。
名前を叫びたくても出来ない。そこに見えない何かがいるから。いつ此方に牙を向くか分からないから。
恐怖で身体が震える。なまえとジローの身の心配をする事しか出来ない自分がやるせない。
「誰か、助けて…」
なまえを、ジローを。
誰か助けてくれ!
「……おい、アレはなんだ?」
跡部の声に、彼が指差した方を見る。するとそこには何やら紅い光があった。それは段々となまえに近づいていく。
ゆっくり近づいたかと思うと、それはなまえの背中から中に入っていった。
そして次の瞬間、彼女を紅い光が包み込んだ。
[←] [→]