「いっくよー!」


ラケットをブンブン振り回して向こう側にいる宍戸に知らせる。


「わーったから早くしろ」


「おー!」


数回地面にボールを突き、それを高く上げる。


「おりゃっ」


高い打点で打たれたボールはキレイに相手側のコートに落ちる。


「激ダサ、だぜっ」


バシィッ


宍戸によってリターンエースが決められる。


「うー、やられた」


「がら空きなんだよ」


「ちぇっ」


口を尖らせ、左側に移動してもう一度ボールを上げた。


「とりゃっ」


「おらよ」


「へへっ、もーらいっ」


サーブと同時に前に出て、今度は俺がボレーを決める。


「負けないよ、宍戸」


「俺だって」


あぁ、やっぱりテニスは楽しいな。なんと言っても強い相手と戦ってる時のわくわく感!たまんないC〜!!


「っせーの…」


ドシーン


すぐ後ろで、大きな音がした。何かが落ちてきたような、そんな音。


振り返るとそこには化け物がいて。俺はひっと息を吸った。


「なんじゃ小僧。お主、儂が見えるのか?」


大きいそれは舌なめずりをした。その様が気持ち悪くて吐きそうになる。


「素晴らしい、お前を儂の糧にしてやろう。有り難く思いたまえ」


「ジロー、どうした?」


宍戸には見えてないそれ。何も無いところを見て固まってる俺を不審に思ったのだろう。


「来ちゃダメだっ!」


「はぁ?何でだよ」


「いいからっ!早くここから逃げ…」


「逃がしはせぬ」


突然、体が締め付けられる感覚と浮遊感に襲われた。


「ジロー!!?」


「は、なせっ!」


気付けば俺は化け物に掴まれていたのだ。


「ジ、ジロー先輩が浮いてる!!?」


「なんやねん。まさか跡部の仕業ちゃうねんな?」


「んなわけねーだろ」


俺の異変にみんなが集まってくる。


「だ、め…みんな逃げてっ」


「お、おいジロー?冗談はやめて早く降りてこい、な?」


「…………っ」


誰も、この状況が分かっていない。当たり前か。何も見えてないんだから。


やば…意識が…。


下でみんな何か叫んでるが聞こえない。


「煩いハエ共じゃ。一掃してくれようぞ」


そう言って化け物が空いてる手を振り上げた。


ダメ…だ。


「ジローッ!!!」


朦朧とする意識の中、なまえちゃんの声がはっきりと聞こえてきた。


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