今日の家庭科は調理実習。どうやらクッキーを焼くらしい。
他はみんな順調にいってる。だけど私の班はダメダメだった。
「な、なんか分離してるんだけど…!」
「わー!それ砂糖じゃなくて塩だから!」
「チョコチップこぼしたー!」
「……………」
私は頭を抱えるしかなかった。
いつもなら教室を出ていく所だが、今日は違った。
ちょっとしたきっかけで、友達なんてすぐに出来るんだよ。
昼休みジローに言われた事。
少し、頑張ってみようと思う。
「あのさ」
私の声に、班の気人達がこちらを見る。その目はまるで怯えていた。
「それ、ちょっと貸して」
「あ、はい…」
1人の子からボウルを受け取る。
うん、これならなんとかなりそう。
てきぱきと材料をボウルに入れて掻き混ぜる。足り無いなと思ったら足し、を繰り返した。
なんとか生地が出来上がり、あとはレシピ通り。
班の人達は、ただ茫然と私を見る。不良の私が料理が出来る事が不思議なのだろう。
「………はい、あとはこれで焼けばおっけー」
型でくりぬいて並べてあるそれをオーブンに入れる。そしてタイマーをセットした。
「………………」
沈黙。
それが痛くて、私は口を開いた。
「ごめん、余計な事し…」
「すごーい!!!」
パチパチと拍手が聞こえてくる。調理実習に相応しくない音に、クラス全員がこちらを見た。
「みょうじさんって料理上手なんだね!」
「他に何が作れるの?」
「だいたいは…」
「羨ましい!私なんて卵焼きもろくに作れないよ!」
彼女達は目を輝かせて私を見る。
「これでクッキーを渡せる!」
「え?誰かに渡すの?」
「テニス部の人達に決まってるじゃない!」
みんな口々に名前を挙げていく。そのほとんどがレギュラー陣だった。
「まさかみょうじさんにこんな一面があるなんて」
「うん、なんか親近感わくよね」
「……ありがとう」
いつの間にか彼女達と自然に話せてる自分がいる。
それが凄く嬉しかった。
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