「いただきます!」
「いただきます」
昼休み、私と芥川くんは中庭でお弁当を食べる事にしている。今日も例のごとく中庭で食べ始めた。
「なまえちゃんのお弁当って、いつみても美味しそうだよね」
「そう?」
自分が作ったお弁当を褒められるなんて嬉しい。
「ねぇねぇ、その卵焼きちょうだい?」
「いいよ」
お弁当箱を差し出すと、芥川くんは嬉しそうに卵焼きを食べた。
「美味しい!」
「良かった」
笑顔で言われ、つい私も笑顔になる。
最近は芥川くんといると笑う事が多くなった。自然と笑顔が出てくるのだ。
「これ、なまえちゃんが作ってるんでしょ?」
「よく分かったね」
「えへへ。だって毎朝、なまえちゃんからいい匂いがするんだもん」
「なるほど」
料理をすると確かに匂いがつく。今まで気にした事がなかった。
「ね、今度俺にもお弁当作ってきてよ!」
「うん、いいよ」
「やった!まじまじすっげー嬉Cー!」
お箸をぎゅっと握って嬉しそうにする芥川くんはまるで子供みたいだった。
「お、なんやここにおったんか」
「俺らも一緒に食っていいか?」
見るとそこには忍足くんと向日くんがいた。手には購買のパンやジュースがある。
「うん!食べよ食べよ!」
私達は少しズレてみんなが丸くなれるようにスペースを作る。そこに2人は座った。
「いやー、まさかみょうじとご飯を食べる日が来るとは」
「こら岳人、余計な事言うんやない」
「いいよ、だって本当の事だから」
私だって、学校の人達と一緒に食べるなんて思いもしなかった。
「1人で食べるより、たくさんの人と食べる方が美味しいよね」
芥川くんの言葉に、向日くんは頷く。
「あぁ。こうやって話しながら食べるから、余計に美味いんだよ」
「これからは俺達も一緒に食ってええか?」
忍足くんの視線が私を捕らえる。小さく頷けば、彼らは微笑んだ。
「なぁなぁみょうじ!俺もジローみたいに下の名前で呼んでいいか?」
キラキラとした期待の眼差しが私を突き刺す。
「え…」
「ダメか?」
シュンと落ち込む向日くんに、私は慌てて否定する。
「ダメじゃないけど…」
「よし!じゃあ決まり!なまえも俺達の事、下の名前で呼べよな」
これは強制だ!
そう言った向日くんは、ニヤッとした笑いを浮かべている。
「友達じゃないのに…いいの?」
「はぁ?何言ってんだよ」
「せやで、なまえちゃん。俺らはもう友達やないか」
あまりにも自然に言うもんだから、私はつい笑ってしまった。
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