私の放課後は(今だけ)忙しい。早めに部室に行って最初に着替えなくてはいけない。
マネージャーの更衣室がないみたいで、仕方ないから鍵を掛けて部室で着替えている。
別に鍵をしなくたってこっちは気にしないのに。
見られて困るほど大層なものではないと言ったのだが、先生に怒られた。
男子の事を考えてあげなさい、と。
あぁ、めんどくさい。
******
「さてと、着替え着替え」
部室に着いた私はカバンから体育ジャージを取り出す。
本来ならテニス部のジャージがあるらしいのだが、私は体験入部として来ているから着られないそうだ。
別に着たくないけど。
マネージャーになるつもりなんてさらさらないのに、テニス部のジャージを貰っても処分に困るというものだ。
スカートを脱ぎ、長ズボンを履く。そしてブレザーとブラウスを脱いでブラになった時だった。
ガチャッ
「失礼しま……」
鳳くんが入ってきた。
「………………………」
彼は見事に固まっていて。見てて面白いと思ったがあまりにも動かないので、声をかけてみる事にした。
「おーい、鳳くん?」
「………っ!」
我に返った鳳くんは、一気に顔が真っ赤になる。そして部室を出ていった。
「すすすすすすみません!ノックしないでいきなり入っちゃって!」
「いや、こっちこそごめん。鍵忘れてた」
とりあえず半袖と長袖ジャージを着る。ドアの曇りガラスに、鳳くんの影があった。
「べべべ別に俺見てませんから!白とか見てませんから!」
「あ、うん」
どうやら気が動転してるらしく、普通に私のブラの色を口にしている鳳くん。しかしその事も気付いていない。
「とにかく、もう着替えたから中に入りなよ」
私からドアを開けてあげると、ドアに背を向けて立っていた。そして耳まで真っ赤な顔を俯かせていた。
[←] [→]