《今日、暇?》
それは突然の電話だった。
*****
「いやー、あのシーンは緊迫したね」
土曜日、いつものように部屋でゴロゴロしていた私の元に1本の電話が。
有沢たつき
一護と同様に私の幼なじみだ。
映画のチケットが余っているからと誘われ、特にやることもないので了承した。
和希とお母さんは保育園の遠足に行ってしまったので家で1人だった。
「うん。マイケルが撃たれた時はどうなるかと思った」
映画は今話題のアクション映画。なかなか面白かった。
今はファミレスで食事をとっている。私はドリア、たつきはハンバーグとスパゲティとライス大盛とピザを平らげた。
相変わらずの食欲に私は笑うしかなかった。
「一護から聞いたよ?なまえ、テニス部のマネージャーをやるかどうか悩んでるって」
「あぁ、それね。来週から体験入部する事になった」
「体験入部?」
たつきは驚いた様子で私を見つめる。それに困ったように顔をくしゃってした。
「うん。あまりにもしつこいから」
「誰が?」
「先生」
私は、たつきに全部話した。学校での立場とか先生の事とか。
あと、昨日出来た友達も。
「そっか。やっと友達出来たんだな」
「友達って言ってもよく分かんないけど」
そこまで仲良くないし、でも共通点はある。お互い“幽霊が見える”という事。
「たつきって霊感強かったっけ?」
「いや、なまえ程じゃない」
最近、たつきも幽霊が見えるようになったらしい。
なんか多いな。
それに私も、最近になって変なモノが見えるようになった。今までは人や動物だったのに、最近はそれこそ“バケモノ”と呼ぶに相応しいもの。
胸の辺りに大きな穴を空けて、顔は仮面で覆われている。
……不気味だ。
「なぁなまえ」
「ん?」
名前を呼ばれて顔を上げると、心配そうな顔をしたたつきがこちらを見ていた。
「何かあったらすぐに相談しろよ?なまえの周りにはあたしや一護、織姫にチャドがいるんだから」
「…ありがとう」
織姫とチャドも、私の友達。
……あぁ、なんだ。私にはたくさん友達がいるじゃないか。
「でも、その友達になった子とは仲良くするんだよ?せっかくなまえと友達になりたいって言ってくれたんだから」
「………うん、分かってる」
初めて、友達になりたいと言ってくれた。
こんな私でも。
「たとえ、学校の友達っていうものが分からなくても、いずれ分かる日が来るんだから」
そうだね。
今は焦らないでいい。
友達というのは知らない間に仲良くなっているのだから。
「ね、この後どうする?」
空になったグラスに入ってる氷を突きながらたつきが言った。
「そうだなぁ…」
ふと、何の気なしに思いついた場所。
「道場に行きたい」
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