「なまえ!おい、なまえ!」
肩を掴んで揺らすが、今のなまえには瞳に光が宿っていないため反応がない。
「なまえ!」
「なまえちゃん!」
「なまえさん!」
井上や石田、チャドにルキアが駆け寄ってくる。それでもなまえの瞳に光が戻る事はない。
「あの時と違って、なまえの意識は深い底に沈んでいる。また泣き叫ばれてもうるさいだけだからね」
「…てめぇ」
「そう睨まないでよ。言っただろ?僕は舐めさせてやりたいんだ」
目の端で、なまえが狼焔を強く握り締めたのが分かった。咄嗟にみんなに『離れろ!』と声を上げてなまえから離れる。
「裏切りという苦汁をね」
桐生の声と同時に、狼焔から狼の形をした焔が飛び出した。
「チッ!」
次々となまえの手から飛び出してくる焔。それらは散々にみんなに向かっていく。
それぞれが焔を消し去っていくが、それよりもなまえが焔を生み出す方が早い。気付けば無数の焔が俺達を囲んでいた。
まるで生きてるような焔。奴らは頭を低くして俺達獲物を見定めている。
「くっ、これじゃキリがない!どうするんだ黒崎!」
「とりあえずこいつらをどうにかするしかねーだろ!なまえを傷付けないように!」
なまえは焔を掻き分けてゆっくりと近づいてくる。そんな様子を見て、桐生は声を上げて笑っていた。
「いい…いいよなまえ!さすがは忠弘さんの娘だ!」
さっきから桐生は忠弘さんに執着している。口を開けば忠弘さん…何か意味があるのか。
「一護!」
「え?」
気を取られていた俺は、ルキアの声で我に返った。だがその時既になまえが目と鼻の先にいて、顔面に回し蹴りをくらった。
「……………っ!」
横に吹き飛ばされたが体勢を建て直し、なんとか着地をする。
「油断しちゃダメだよ?なまえも立派な死神なんだから」
「くっ…!」
なまえはいつもより機敏な動きで斬り込んでくる。それを斬月で何度も何度も受け止めていた。細い腕のどこに力があるのか、彼女の一太刀はとても重い。
「浦原さん!どうしたらいいんだよ!」
「操ってる本人を倒さなければ斬魄刀の効果は切れないでしょう。しかし…」
なんだか歯切れが悪い浦原さんを不思議に思ったが、俺は地面を蹴って桐生に向かった。
「おらぁ!!!」
斬月を振り上げて、そのまま桐生目がけて振り下ろした。
ガキィン
「な…っ!」
振り下ろした斬月を受け止めたのはなまえだった。
[←] [→]