ひとまず、私はみんなを部屋へ招き入れた。トレーに人数分のコップ(ジュース入り)を置いてテーブルに置いた。
「はい、どうぞ」
それぞれにコップを差し出して、私はふっと息を吐いた。
「…みんな見えるわけ?」
私の言葉に彼らは小さく頷く。それに狼焔を見た。
「どういう事よ狼焔。普通の人間には見えないんじゃないの?」
「俺だって分かんねーよ。多少なりとも霊力があっても俺の姿は見えないはずだ」
彼は幽霊じゃない。斬魄刀だ。いくらジローに霊力があったとしても、狼焔は見えるワケが無い。それに他のみんなは霊力がないはずなのに…。
これは喜助さんに相談しないといけないな。
「なまえ先輩、そろそろ教えて下さい」
日吉くんの声にみんなが頷く。
「その人は誰で、なまえ先輩に何が起きてるんですか?」
みんなの目は私に注がれている。その中でジローは心配そうな顔をしていた。私は安心させようと彼に向かって微笑んだ。
「今から話す事は全て本当の事。私の周りで何が起きているのか、私に何が起きているのか」
「お、おい!なまえ!」
狼焔が私の肩を掴む。全て話すという事に不安を抱いてるのかもしれない。
そんな彼の手に自分の手を重ね、小さく頷いた。
「大丈夫だよ、狼焔。だってみんなは私の大切な友達だもの」
「なまえ…」
そっと肩から手を離し、私はまっすぐ前を見据える。
「長くなるけど、聞いてくれる?」
そうして私は全てを彼らに話した。
*****
「………というわけなの」
話し終わった私に誰も口を開かない。壁時計のカチカチという音がやけに響いた。
「これが私に起こった嘘のような本当の出来事です」
ジローが襲われた時の話はしなかった。せっかく記憶を書き換えているのに混乱させるような事は出来ないと判断したからだ。
「信じられないかもしれないけど信じて…」
「これで納得がいった」
黙っていた亮が口を開く。私は不思議に思って首を傾げた。
「どういう事?」
「あの時の事だよ。夢だと思っていたが違ったんだな」
「あの時、って…?」
手が汗ばんでくる。亮の次の言葉をなんとなく予想していたからだ。
「ジローが襲われた時の事だよ」
その言葉に私は下唇をぎゅっと噛んだ。
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