彼と出会って数か月が経ったある日、私は自分の異変に気付いた。幽霊が見えるようになっていたの。
それはあまりにも突然の事で、生きてる人間と良く間違えたりした。それがクラスの人にバレて、次第に居場所が無くなっていった。
唯一の味方は真咲さんと
忠弘さんだった。
「何かあったら僕を頼って下さいね」
「…先生、ひ弱じゃない」
「あ、失礼ですね。こう見えて僕は腕が立つんですから」
忠弘さんは私をかまうようになった。私はそれを煩わしく思いながらも、惹かれていくのが分かった。
何かと理由を付けて忠弘さんの所へ行った。彼は快く迎えてくれて、その暖かさが嬉しかった。
私達は人目を憚って外でも会うようになった。彼のマンションに行ったり、私のアパートに遊びに来たり。楽しかった。
その日も彼のマンションへ行く途中だった。
「お前、うまそうだな」
「………っ!」
私は虚に襲われた。大きな爪が背中を引っ掻き、血が溢れた。
怖かった。得体の知れないものが。
怖かった。死ぬのが。
必死で逃げて、身体中傷だらけになっても走って、とにかく逃げた。
だけど結局虚に追い詰められた私は、覚悟を決めた。ぎゅっと目を瞑り、少しでも目の前の恐怖から逃れたかった。
「…遅くなりました」
いつまでも襲ってこない衝撃、それに聞き慣れた声に私はそっと目を開けた。そこには、黒い袴を着て虚の爪を受けとめている忠弘さんがいて。
「貴女にケガをさせてしまいましたね」
「みょうじ、せんせ…」
「やはり私が見えますか」
忠弘さんは一振りで虚を倒した。目の前の光景が信じられなかった。あぁ私は夢を見てるんだと、何度も言い聞かした。だけど背中の傷がズキズキと傷んで、これは現実なんだと思い知らされた。
「……僕は、死神なんです」
そして私は知った。忠弘さんが死神だという事、虚という化け物を倒すために来たという事、ほとんど全て聞いた。
それでも私は彼が好きだと告げた。少し前に気付いた気持ち。自然と言葉が出てくる。
そんな私に忠弘さんは応えてくれた。
「僕も貴女が好きです」
と。
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