「拓海が大好き」

笑顔でそう告げた。
拓海は目を大きく見開いている。

そりゃそうだ。
だって一度は諦めると、止めると言ったのにまた告白しているのだから。

「ずっとずっと大好きだったんだもん。諦めるなんてやっぱり無理だった」

小さい頃から拓海が大好きで、彼しか見えていなかったのに。
諦めるなんて自分に嘘をついて周りにも迷惑かけて、そんなのダメだって気付いたから。

だからもう自分に嘘をつくのはやめるんだ。

「私は拓海が大…」

もう一度想いを伝えようとしたのだが、それが最後まで紡がれることはなかった。

気づけば私は拓海に抱き締められていたから。

「え、拓海…?」

どうして抱き締められているのか分からない。
彼の名前を呼んでみるとさっきよりも力を込められた。

心臓がドクンドクンとうるさい。

「あ、あの…」

「…………に」

「えっ?」

呟かれた言葉は自分の心音に掻き消されて聞こえない。

「…俺が先に言おうと思ったのにって言ったの」

「…………ええっ!!?」

身体を離して拓海の顔色を伺おうとしたが、彼はそれを許さないように更にきつく抱き締めた。

「恥ずかしいからこのまま聞いて」

「こ、これも恥ずかしいよ!」

「見られるのも恥ずかしいの」

ぐっと後頭部を押さえつけられる。
そこから聞こえてくる音に私は驚いた。

心臓が、早い…?

「俺さ、なまえに、その…告白されるまでずっと幼なじみ…いや、家族だと思ってたんだ」

「…うん」

「だから、なまえに悪い虫が付かないように、いやがらせとかされないように守らなきゃって」

「なにそれ」

「なまえはモテるの。自覚ないだろうけど」

モテる?この私が?
そんな心当たりなんてない。そう思ってるのが分かったのか、拓海は深く息を吐いた。

「だから俺が守らないといけないんだよ」

「守るって…」

「なまえは自分で思ってるより隙がありすぎなんだから」

そう、なのかな?よくわからないけど彼が言うのだからそうなのかもしれない。

「なるべく離れないように、一緒にいられるようになまえの側にいたつもり。だけどあの日、なまえにさよならされて初めて距離ができた」

スゥ、と拓海は息を吸う。
何を言われるのか、私は聞き逃さないように意識を集中させた。

「気まずいから距離が出来てもいいと思ったけど違った。なまえが居なくなって何もかもがつまらなくなったんだ。お笑い番組を観ても、誰かが馬鹿なことをしても」

私もそうだった。
拓海と距離を空けるようになって世界が途端につまらなくなった。
私はこんなにも拓海を中心にしていた、ということが分かる瞬間でもあった。

「それに、なまえが蓮やクラスの男子と話してるかと思うと無性にイライラして。それで気づいたんだ」

ぎゅっと、腕の力が強まった気がした。

「俺はなまえが好きなんだ。幼なじみとしてではなく1人の女の子として、って」

「…………え?」

世界の音全てが消えてしまった。

ずっとずっと待っていた言葉。
だけどあまりにも現実味がなくて、私のちっぽけな頭では処理しきれない。

「拓海、が…私を好き?」

「…うん」

あぁ、そうか。
これは夢に違いない。

私は体育の授業中に倒れたままでまだ保健室に寝てるんだ。
だからこんなにも都合のいい夢が見られるんだよ。

「夢なら覚めないで欲しいな」

「何言ってるの?」

「だってこれは夢で、覚めるとまた拓海と離れてる現実が待ってるんだもの」

「なまえ…」

「だから覚めなくて…」

いい、という言葉が紡がれることはなかった。
さっきまで視界にあったのは拓海の胸。
それなのに今は拓海の顔でいっぱいになっている。

唇には何かが当たってる感触。

これは一体何…?

それからどのくらいの時間が経ったのか、ゆっくりと何かが口から離れていった。

「目覚めのキスはどうですか?お姫様」

「え?…あ」

真っ赤な顔で微笑む拓海の言葉でようやく理解できた。

拓海は私を好きで、そしてさっきのはキス。

「……………っ」

ボンッと顔が真っ赤になる。
彼の顔を見ていられなくて俯いた。

「……んとに」

「ん?」

小さく呟いた声は拓海には届いていなかったらしい。
私はぎゅっと裾を掴んで顔を上げた。

「ほんとに?嘘じゃない?」

泣きそうになるのをぐっと堪える。
そんな私を拓海は目を見開いて見た後、また抱き寄せた。

「―――――〜っ!!!それは反則でしょ…!」

「な、なにが?」

「今の。俺以外の男にやったら怒るからね」

ぎゅっと腕の力を込められる。
私は恐る恐る拓海の背中に腕を回した。

「拓海、大好き」

「うん」

「これからも、ずっとずっと大好きだから」

「俺も大好きだよ。それになまえが嫌だって言っても離さないから」

「うんっ」

幼い頃からずっと夢見ていた。
拓海と両想いになれる日を。

だから、私から離れるなんてあり得ない。

私は昔からずっとずっと、



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(貴方に首ったけ!)




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