「うーん」
お気に入りのうさぎのぬいぐるみ(うさぴょん)を抱き締めて、ベッドの上をかれこれ30分はごろごろしている。
明後日から始まる定期テストに向けて勉強をしなければならないのだが、今日はやる気がでない。
蓮と一緒に勉強しようと思って連絡したけど彼はバイトがあるらしい。
テストだというのにバイトなんて…さすが、秀才は違うよ。
代わりにお姉ちゃんに勉強を教えてもらおうとお願いすると初めは『いいよ』って言っていたのに、今日になって彼氏のなっちゃんと出掛けてしまった。
「くそぅ」
うさぴょんを抱き締める力を強くして天井を見つめる。
拓海は今頃何してるかなぁ…ちゃんと勉強してるかなぁ。
きっと拓海の事だから勉強しないでごろごろして………って、また拓海の事を考えてるよ私。
「はぁ…」
このまま部屋にいたら勉強どころか拓海の事ばかり考えてしまう。
そう思って『よしっ!』と立ち上がった。
「図書館に行ってこよう!!」
思い立ったが吉日。
大きめのバッグに教科書やノートや筆記用具などを詰め込んで家を出た。
今日の天気は快晴。
雲1つない青空の下をゆっくりと歩いていく。
今週は暗い気分だったから今日みたいな空を見ていると元気が出てきた。
月曜日からは今まで通り普通に拓海に接しよう。
一生話せないままなんて嫌だ。
「って、全部私が悪いんだけど」
勝手に告白してフラれて、気まずい雰囲気を作ってしまった。
でも拓海がいないと寂しい。
矛盾してる。
そうお姉ちゃんに言ったら『恋愛なんて矛盾だらけでしょ』って言われた。
だから私は、この前の事は忘れて普通になろう。
今までみたいに拓海と一緒に学校に行って、今までみたいに遊びに行って。
拓海の“幼なじみ”に戻ろう。
「それが一番だよね」
いつかきっと拓海以上に好きな人が現れて、その人と素敵な恋をして。
今はまだ切なくて苦しいけど、あの頃は拓海が好きだったねって笑い話になる日がいつか来る。
「それまで頑張れ私っ!!!」
「何を頑張るの?」
拳を突き上げて気合いをいれてる私に聞こえた声。びくりと肩を震わせてゆっくり振り向く。
「あ…」
そこには先程まで考えていた人物、拓海がいた。
「大荷物だけど、もしかして図書館?」
「う、うん」
「そっか」
目の前にいる拓海は今までの拓海で、それが嬉しくもあり悲しくもある。
「ってか何で拓海がここに?」
「だってここ、俺んちじゃん」
彼は人差し指で左(私から見て右)を指差す。
『へっ?』と間抜けな声を出して頭だけを動かすとそこには行き慣れた拓海の家(私の家から近い)があった。
「気付かなかった…」
「なまえらしいね」
拓海は本当に面白そうに笑った。
彼の笑顔を見るのは久しぶりで、胸が苦しくなった。
「ほら、行こう」
「えっ?」
「図書館」
言われた事が分からずに首を捻る。
すると拓海は自分のバッグを指差した。
「俺も図書館に行くから」
end