▼ 3 運命
「私の強い霊感が、おまえ達に起きたことを感じ取ったのだ。さあ、長老トパパの言葉を聞きなさい」
トパパがいる部屋の前、長老の一人ダーンにそう告げられた。
自分に起きたこと。それは紛れもなく、クリスタルからの声の事だろう。
否、感じ取ったということは、声が聞こえたわけではなさそうか。言葉通り、感じたのだろう。今起こっていること、これから起こり得ること、そして我が子の行く末を。
三人は顔を見合わせて頷くと、扉を開いた。
「…来たか」
目を瞑り何かを思案しているように俯いていたトパパが、ゆっくりとその双瞼を上げる。
「まさかおまえ達が選ばれるとは…これは偶然の選択ではないことを、まず知らなければならない。クリスタルは、その意思でお前たちを選んだのだ」
「その事でじっちゃんに聞きたいことがあるんだ、そんなこといきなり言われても、光とか闇とか意味がわからないよ!」
「僕達、いつもみたいに外で話をしていたんです。そしたらいきなり声が聞こえてきて…」
「私もルーネスと一緒で、いきなりそんな話になっても、何がなんだか全然分からなくて…おじいちゃんなら何か知ってるかもって思って…」
「ほう、ルーネスも一緒におったのか?」
「え!?あっ、いや、オレはちょっと…一人で違う所に行ってたっていうか…探検してたっていうか…」
「ふぉふぉ、わかっておる。クリスタルに直接語りかけられたのはおまえじゃろう?」
「そうだけど…」
「ルーネスの心にある一際強い光の輝きが、おまえをクリスタルの元へ導いたのであろう」
それぞれの思いを聞き、トパパはゆっくりと三人の顔を見回した。
「その昔、赤子を連れた旅人がわしのところへやってきてな…顔はすすで黒ずみ服は焼けこげておったその者に、おまえ達は連れて来られたのじゃ 」
そしてひとつ頷くと、静かに言葉を続ける。
「思えばその時からすでに、おまえ達はクリスタルに 選ばれる運命だったのだろう…」
どこか懐かしそうに紡がれるそれは、そのとき、を思い返しているのだろうか。
三人が自分の元へやってきた時。とっくに子育てを引退した爺に赤子三人。どうしたものかと悩んだが、子供のいなかったニーナが乳母を申し出てくれ心底ほっとしたものだ。
その身に何が起こったのか知らず、屈託のない顔で笑う赤子達。心が絆されたのを覚えている。
大事故に巻き込まれながらも無傷で生きながらえた強運と屈強な生命力…まあこれは助け出した彼の者のお陰なのかもしれないが、それには光の加護もついていたということなのだろう。
クリスタルに選ばれた今、彼らは世界を救える力の持つ特異の戦士なのだと、そう思える。
それが背負う運命ならば。覆い尽くそうと迫る闇を振り払い、世界に光を取り戻すのだ。
「さあ、その力を…おまえの光の心を無駄にしてはならない。旅立つのじゃ!」
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