「付き合えません。ごめんなさい」

その言葉が自分に向けて言われたのだとすぐにはわからなかった。

「え……?どうして……」

頭もそこそこよく、運動神経も良い方で大抵のスポーツはそつなくこなせる。自分で言うのもあれだが、顔だっていい方だ。
その俺が告白してフラレただと……?今までは女の方から来ていたのに……。

「だって、私青木くんのことよく知らないし……」

「そんなのは後からでも良くない?付き合ってからでもさ」

「私はそんな適当なのは嫌なの」

「でもさ……」

理解できずに言葉を続けようとする俺に、彼女が言いにくそうに言った。

「えっと、正直に言うと、好きな人がいるんだ。だからごめん」

「それって、誰か聞いてもいい?」

そういうと、彼女は頬を赤らめた。くそ、そういうところが可愛いんだよな。

「……高橋くん」

「はっ!?高橋!?」

高橋は同じクラスだが、成績も運動神経も中の下。顔だって俺のほうが整ってると思う。客観的に見て、俺が高橋に劣る点は何もないはずだ。

「俺のほうが良くない……?」

それは自然に出た言葉だった。
すると、彼女の頬の赤みはすっと引いた。眉間に若干のしわが寄る。

「あのさ、私なんかが言うのもあれだけど、確かに青木君はかっこいいと思うよ。何でも出来るし、すごいと思う。でも、だからって全員が全員あなたを好きになるわけじゃないから」

そういうと彼女は、じゃあ、といって帰って行った。






どれくらいそのままだっただろうか。

冷たい風が吹いた。ああ、やっぱり冬だなあ、とぼんやりと思った。
そして、すっと一つの事実が心の中に入ってきた。



「あぁ。俺、フラレたのか」



初めて感じる胸の痛み。動揺。今までとは違う意味で、早まる鼓動。全てが初めてで受け止めきれず、一体どうすればいいのかさっぱり分からなかった。






どこかで俺の好きなグループの曲が流れている。

……俺のか。
ポケットで鳴り続けているスマホをとりだし、電話に出た。

「よぉ。悪いな。邪魔したか?」

明らかに邪魔目的でかけてきたのは友達の亮介だった。ニヤニヤしているのが声から分かる。

「あー……何かフラレたっぽい」

「はあっ!?お前が!?」

「おー……どうしたらいいか分かんねぇ……」

正直にそう言うと亮介はすぐに明るい声で言った。

「よし、カラオケに行くぞ!」

「はぁ?俺、今そんな気分じゃないんだけど」

「だからこそ行くんだよ。お前、一人だとどんどん落ち込むだろ?」

そう言われると何も言い返せなかった。

「だから、カラオケで思いっきり歌ってスッキリするんだよ。話だって聞いてやるから」

今からいつもの所に集合な、と言って亮介からの電話は一方的に切れた。
暫く何かわからなかったが、突然、目の奥が熱くなった。こみ上げてくる何かを慌てて飲み込んだ。

亮介ってかっこいいな、素直にそう思った。

今まで俺は同じような目にあった奴らに何をしてきたのだろう。馬鹿だなぁっと笑ってからかうだけだった。そこで一緒に笑ってたけど、きっと奴らだってすごい辛かったんだろうな。そう思うと今までの自分の酷さに初めて気づいた。

皆、こんな思いをしていたのか。

とりあえず急ごう。何となく、亮介を待たせたくなかった。
まあポテトフライぐらいなら奢ってやろう。それぐらい、かっこつけさせてほしかった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お久しぶりです。
友人からのリクエストだったのですが、上げていいと言われたのでアップしました。
イケメンが思いっきり振られるというリクいただきました。

まぁ、皆が格好いいと思っていても、そう思わないってありますよね。逆も然りだと思います。そして、かっこいいからって皆がその人を好きになるか、っていったらそうとは限りませんよね。

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