色色(銀魂/万事屋) 視界の隅で、やわらかな黒色が揺れる。反対側では、ぴょこぴょこと幼い桃色が跳ねた。きっとその後ろには、大きな白色がいるのだろう。 今までだって、誰かしら俺のそばにいた。けれど、こんなにも近くに、必ず視界の中に入っている、なんてことは一度だってなかった。 いや、かつては浅い茶色を自ら追っていたか……。 しかし、それも遠い昔の話で、ずうっと様々な色が視界に入っては消えていくのを繰り返していた。それがいつしか、黒が入り込み、桃が飛び込んできて、白がのしかかってきた。俺の世界も随分と鮮やかになったものだなあ、なんて。それらに連れられて、いつのまにか色とりどり……。 横を歩く黒色が、俺の瞳を覗き込んで、怪訝な顔で言った。 「銀さんてば、何にやにやしてるんですか?」 前を歩く桃色が、振り向いて手を振る。 「銀ちゃん、新八! 早くしないとおいてくアル!」 「ワン!」 共に先行く白色が吠える。黒色が待ってと走り出した。 ああ。 緩む口元を誤魔化すように、浮いた心を落ち着けるように、大きく息を吐いて言う。 「うるせーな、今行くから待ってろ!」 視界の中で、三色が鮮やかに笑った。 prev / back / next zatsu。 |