テニスの王子様 | ナノ


悪戯>お菓子

「トリック・オア・トリート」
 こちらを真っ直ぐに見つめながら発せられた台詞はどうにも手塚らしくなくて、僕は思わず首を傾げる。しかし彼はそうは思っていないのだろう、真剣な表情でもう一度同じ台詞を僕に向かって言った。
「トリック・オア・トリート」
 そんなにお菓子が欲しいのだろうか。しかし今の僕は甘いキャンディもクッキーも持っていない。
「悪いけど、今はお菓子を持っていないんだ」
 ごめんね、と手を挙げて見せれば、いいんだと首を横に振った。訳がわからず首を傾げると、僕の前髪に触れて言う。
「お前に悪戯がしたかった」
 急に世界が暗くなり、額に一瞬だけ柔らかい感触。再び明るくなった目の前には、やたらと満足そうな顔をした手塚。
 一呼吸置いて状況を把握した僕の顔が、一気に熱くなる。
「そ、れは……」
 悪戯とは言わないよ。
 顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ僕を見て、手塚はどうしたんだと首を傾げた。






20121031


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zatsu。


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