テニスの王子様 | ナノ



 幸村は園芸を趣味にしている。なので当然、植物の名前から効能まで、それに関する知識を豊富に持っていた。それとは対照的に全く植物のことがわからない俺は、幸村とこうして並んで花壇を眺めていても皆同じ様に見えた。そう言うと、幸村はそうだと思ったとくすくす笑った。
「でもね真田。俺だって最初から詳しかった訳じゃないよ。好きだから、色々と調べているうちに詳しくなったんだ」
「ふむ」
「興味のあることはいくらでも覚えられるものだからね。真田だってそうだろう?」
 確かにそうかも知れない。テニスや剣道のことを思い浮かべながら頷く。幸村は視線を花壇に戻すと、愛おしそうに花々を眺めた。
「それにね、あの花たちも俺たち人間と同じ様に一つ一つ違うんだよ」
「俺には皆同じ様に見えるが……」
 俺も幸村に倣って花を眺めるが、それらの違いは矢張り判らない。一つ一つと言うくらいなのだから色や形が皆それぞれ少しずつ異なるのだろう。
 幸村が俺の顔を覗き込んで静かな声で言った。
「だから、もし真田が花だったとしても俺ならすぐに見分けられるよ」
 言葉の意味が解らずに首を傾げる。
「どういうことだ?」
「だって、真田のことも花のことも俺はよく心得ているからね」
 幸村はそう言ってにこりと笑った。
 
 

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