テニスの王子様 | ナノ


プレゼント('11仁王誕)

 12月2日金曜日。
 A組を訪れた俺は真っ直ぐに自分の席で文庫本を捲っている柳生の所へと向かった。それは10月の柳生の誕生日に俺が贈った物だったから、少しだけ顔が緩む。俺は表情を改めると、柳生に話し掛けた。
「のう、柳生」
「何ですか、仁王君」
「突然じゃけども、日曜日って暇かの?」
 そう聞くと、柳生は本のページを捲りながらあっさりと「忙しいですねぇ」と言った。
 そりゃあ、必ずしも暇であるとは思っていなかったけれど、こうもあっさりと断られるといくら俺でも凹む。
 がっくりとうなだれ、邪魔したの、と自分の教室へと帰ろうと踵を返すと、背後からくすくすと笑う声が聞こえた。
 振り向くと柳生が口を押さえて笑っており、その本はそんなに面白かっただろうかと首を傾げた。
 柳生は、ぱたりと本を閉じると、目尻に溜まった涙を人差し指で拭いにこりと微笑んだ。
「嘘ですよ。日曜日、暇です」


***


 12月4日日曜日。
 俺と柳生は夕焼け空の下、二人並んで歩いていた。やはり冬は空気が澄んでいるのかいつもより夕日が綺麗に見える。
 今日一日、俺たちは何の計画もなくあちこちをふらふらと歩き回った。映画館、喫茶店、博物館、図書館。ショッピングセンターやデパートにも行った。
 この無計画に、普段ならば確実に文句の一つでも言うであろう柳生が今日に限って何も言わずに付いて来た。
 珍しいこともあるもんだと思い返していると、横を歩く柳生が口を開いた。
「仁王君、今日お誕生日ですよね」
 ね、と俺の顔を覗き込んでにこりと笑う。
 まさか柳生が俺の誕生日を覚えているなんて思わなかった。相当間抜けな顔をしていたのだろう、大丈夫ですか、と柳生が目の前で手をひらひらと振る。
「……よぉ知っとったの。俺の誕生日が今日じゃて」
「柳君に聞いたんですよ。あなたに直接聞いても、何だかんだとはぐらかされそうな気がしたので」
 それに、と俺の前へと回り込みながら続ける。自然俺たちの足は止まり、向かい合った。
 太陽は既に沈み、辺りは暗かったが丁度俺たちの真上には街灯が点っていて二人で舞台に立っているようだった。
「あなたには私の誕生日を祝っていただきましたから」
 ポケットからあの文庫本を取り出すと顔の横へ翳す。それをまた同じ場所へしまうと、反対側のポケットから巾着状に口をリボンって結んだ青い袋を取り出した。そしてそれをにこりと笑って俺へと差し出す。
「お誕生日おめでとうございます、仁王君」
「お、おう」
 包みを受け取ると、柳生は開けて下さいと言った。開くと中には紺色の手袋が一組入っていた。
 柳生は俺の手から手袋とそれが入っていた包みを取り上げると、空になった手に手袋を填めていく。
「あなたは寒がりの癖に手袋を着けないから」
 これでよし、と微笑む柳生は今年見た中で一番可愛かった。 
 
 
 
 
 
 
 
 
仁王くんお誕生日おめでとうございます!
またしても遅刻ごめんなさい…。
20111217


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zatsu。


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