テニスの王子様 | ナノ



 柳生の膝の上で小さな猫が眠っていた。
 その真っ白い毛並みを優しい手付きで撫でる。普段潔癖の気のある柳生が動物を愛でるのは何とも不似合いであった。
 しかし俺には酷く興味深く思われた。
「やぎゅ、猫好きなん」
 問えば微かに笑って、ええと頷く。
「うちにも居るんか」
「いいえ」
「ふうん」
 ふもふもと柳生に撫でられる猫は依然として目を覚まさない。じりじりと心の臓が焦げ付きそうだった。
「あなたは、この猫によく似ていますね」
 見た目を指していったのか、それとも性格を指していったのか、俺には判らなかったが、きっと両方だろう。
 猫は漸く目を覚まし、柳生の膝から飛び降り何処かへ駆けていった。名残惜しそうにその後ろ姿を見つめていた目が流れて、そのまま俺を捉えた。
「本当、そっくり」
 そう呟いて困ったように笑う。
 もし俺が猫になれば、何時までも傍にいてくれるのだろうか、などと馬鹿げたことを思った。
 
 
 


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zatsu。


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