広大な宇宙の一角に浮く、宇宙海賊春雨の戦艦。
その内部の処刑場と呼ばれる場所にて、場を埋め尽くす程の天人と一人の地球人が或る目的の元に集まっていた。


…その目的とは、或る反逆者の処刑

現在、反逆者こと瑠奈は処刑場の中央で手錠と足枷を付けられ絶賛拘束中。彼女は自分の末路を知っていても尚お得意の笑顔を崩さず、凛と正面を向いていた。


目線の先には一匹の初老の天人…春雨の長、阿呆提督である


「者共、よく見ておけ!これが謀反人の末路だ。我に仇なすは元老に仇なすことと同じ。元老に仇なすは春雨に仇なすことと同じ。これなる掟を軽んずれば、鉄の軍団も烏合の集と成り果てる」


うるっさ。

別にこんな拘束くらいやろうと思えばすぐ解けるし、牢獄で晋助に意味深な言葉を聞かされてなければ暴れられたのになぁ…


明らかに場違いだろう事を考えながら、私はこの状況下でも余裕にお得意の笑みを浮かべていた。



更に阿呆は再び汚い声を響かせる

「瑠奈よ、お前は女の身でありながら第7師団を率いり、その存在は春雨内でも脅威となっていた」
「…哀れだ。その容…身体なら春雨に入らずとも豊かに暮らしてゆけたものを。最後に何か言い残すことはあるか?」



下衆た笑顔を浮かべる阿呆。
態々容姿じゃなくて身体と言い換える事に悪意を感じざるを得ないよね。エロジジイが。

そんな挑発するような阿呆の言葉にもおっとなーな私様は全く表情を崩すことなく、考えている事を悟られられる事なく、この場に来て初めて言葉を紡いだ


「それじゃあ、一つだけいいですか?」

大きく息を吸って、吐いて、周りに響き渡るように大声で、


「アホ提督〜☆」

「…殺れェェェ!!ブッ殺せェェェェェ!!」



飛びっきりの美少女スマイルで奴をバカにした。とてもすっきりしたよ!


マイクをキーンと鳴らし怒鳴る阿呆提督の表情に、作り笑顔はそのままで心の中で大爆笑していた私に対して、先程のを処刑開始の合図と勝手に捉えたのか周りの他の春雨団員が今にも飛びかかってきそうだったその時。



トス、トス、トス


「まぁ待てよアホ…阿呆提督」

満を持してこの場でたった一人の地球人である晋助が登場。これから始まる戦闘を想像したら心が躍って仕方なかった。


「そいつは、俺にやらせちゃくれねェか」

何時もより不敵な笑みを浮かべそんな私を一瞥、続けて言う晋助


「残念ながらサシの勝負とやらは応じてやれなかったが、介錯くらいはつとめてやらねェとな」


とうとう晋助が刀の届く距離に。いつか1対1で勝負してよね!という意味も込め彼を眺める。
私達は正面に向き合い、お互い視線を交わらせどちらともなく笑った


「こんなオンボロ船に乗り合わせちまったのが運の尽きだったな、お互い」

そして子供が軽口を叩き合うかの様に言葉を交わし出す


「…あなたと私の行く先が一緒だって?地球の喧嘩師さん」
「さァな。少なくとも観光目的じゃねェのは一緒だ」
笑うのを止め、目を見開く
「観光だよ。地獄廻りだけどね!」
「…ククク、違いねェ」


晋助となら、地獄巡りも悪くないかも。ていうか楽しそう!そう考えた次の瞬間だった。


ズシャアッッッ

晋助が刀を一閃し、私は拘束具と共に斬られた。



‥バタッ

「フッ」


硬直する空気に、喜びの表情を浮かべる阿呆提督。
頭から床に倒れた彼女を見、匂狼団長は手で合図をするがほぼ同じタイミンクで高杉が呟いた


「せめて地獄で眠りなァ、」
その言葉は、今しがた己が斬った彼女に向けたものだと思われたが、


「…オンボロ船の船員共よ」

それは全くの誤算であることを春雨団員達が知った時は、既に手遅れだった。



ドシャァッッ
刹那、高杉は瞳孔を開ききり背後に迫っていた団員二人をあっという間に斬る。


グキッ

一方、 私は起き上がりまた別の団員の頭を捻り潰す。
そう、私は元々死んでおらず、先程のは春雨の目を欺く為の芝居に過ぎないのでーす。



「ねぇ晋助、私死んだフリ上手だった?」
「お前にしちゃァ上出来だ」


わーい、晋助に褒められちゃった!
正直嬉しいので年相応な感じで喜ぶ。この間晋助はもう一人斬り、私は空中でバク転からの踵落としで一人ノックアウト。


「ほっと…、よっと!」

刀を構える晋助と手を構える私、背中合わせになり余裕の表情で周りを見渡す


「なっ、何ィィィィ!?」
予想外の出来事に叫び声を上げる阿呆。襲い掛かってくる春雨団員達の中心で、言葉を交わした


「だから言ったでしょ?あれは呪いの博打だって。どっちが先に死ぬかなんて言ったけど、二人一緒に死ぬつもり?」


まあ、そんなのは真平御免だけど!

各々脳裏に浮かぶは、数時間前の牢屋での出来事。そこで私達は女狐による生か死かの賭けをし、残念なことにお互いハズレ。
その通り、直後に私は捕まり晋助は現在進行形で殺されようとしている。どっちが先に死ぬか…というのは私が牢屋の中から放った言葉だった。


キランッ

晋助の刀が妖しく光り、狂気的な笑みと相俟ったその気迫に周りの者達は尻込みする


「どうせ踊るなら、アホとよりとんでもねェアホと踊った方が面白ェだろうよ」


晋助の言葉に満足してふふっ、と笑みを零す


「やっぱり面白いね…侍って」


その笑顔の無邪気さは明らかに場違いだった、と名も無い戦士は語る。


「高杉ィィィィィィ!!貴様らは既に用済みの道具!宇宙の塵にしてくれるわァァァァ!!」


阿呆の声で正気に戻ったらしい雑魚どもは、騒ぎの元凶である私達に一斉に銃口を向ける。そんなことは気にも留めず、晋助は地を這うような低い声を辺りに響き渡らせた


「用済みなのはてめぇらだよ。

…言っただろ?介錯は俺が務めるってよォ。この刑場において、処刑執行人は俺ただ一人」



口元を歪めて笑みを浮かべる


「…此処は、てめぇら全員の首斬り台だ」


そこから垣間見えるは、強大な悍ましい殺意。


…本当の罪人は、何方だろうね?
それを直に感じた私は流石夜兎の血と言うべきか、自身の性格も影響してこの状況を明らかに楽しんでいた



「よーし、お前ら全員殺しちゃうぞ〜☆」


こうして宇宙海賊春雨第7師団長瑠奈と鬼兵隊総督高杉晋助を中心とした脅威のクーデターは火蓋を切ったのであった、まる。


…これが後に春雨史上最大最悪の反乱として語り継がれることになろうとは、まだ誰も知らない。


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