「阿部ーあ、花井でも良いんだけど、どっちか数学の教科書貸してくれない?」
「「篠岡ー栄口が呼んでるぞー」」
「なっ!?バ、阿部!花井!バカ!呼んでない!ってことはないけど違う!!」
「あー、悪い栄口。篠岡今いねぇみたいだ」
「えっ…あ、いやいや違くて!オレは教科書借りに来ただけであってそんな…」
「そんな?」
「う…いや、確かに教科書借りるついでに篠岡の顔を見れたらなーとかは思ったけど、その、篠岡に会いに来たとかそういうわけじゃなくて…いや、今日朝練なかったからまだ1回も会ってないし会えたらラッキーかな…会いたいなって感じにしか思ってなくて!」
「長ぇよ!!」
「てか栄口、お前ら付き合ってんだろ?お前の行動、片思いしてたときから何ら変わってねぇぞ?」
「他のクラスすっ飛ばして7組に教科書借りにくるとかな」
「うっ」
「初々しいというか何というか…」
「い、いやだって…さ、篠岡すごく良い子じゃん?優しいし、よく気が利くし頑張り屋だし…勿論すごく可愛いし…だからまだ付き合ってるっていう感覚わかなくて」
「おー………」
「この前一緒に出かけたときもさ、篠岡ワンピース着ててすごく可愛かったし…一緒にいてすごく楽しいし…」
「……………」
「篠岡の良いトコとか挙げだしたらキリないけどさ、なんかもう全部好きだ」
「……………」
「だからオレ今すごく幸せなんだ…って、ん?阿部なにしてるの?」
「あ?何って録音だけど?」
「は…」 カチッ
『――――なんかもう全部好きだ』
「!!!!?」
「あとで篠岡に聞かせっか」
「そだなー」
「ちょちょちょ待って!消して!消してよそれ!!」
「オレらにノロケ聞かせたバツだ馬ー鹿」
『だからオレ今すごく幸せな「うわー!うわー!止めて止めて!てかオレそんなこと言った!?」
「楽しそうだね?何の話ー?」
「うわぁあ!篠岡!」
「お、篠岡良いところに。あのさー今栄口がな…」
「ちょっとぉぉお!!」
この後、録音データを消させるのに必死で数学の教科書を借り忘れたのは言うまでもなかった。
データは消去できないし教科書は借り忘れるし散々な栄口。
リクありがとうございました!