千歳(ちとせ)の貴方に逢いに行きます



ブログではお久し振りですどうもごきげんよう、田中です。
もうお久し振りが導入として定型になってますね、あははは。
いや、定型以前に書いてないですね。なので久々に博物館・美術館レビューという程でもない備忘録っぽいものを認めたいと思います。
写真はない上文章ずらっと並べていくけどな!
某氏に言質も取られたことですし、つらつら参りましょうか。それではしばしお付き合い願います。






先日美術館と博物館をはしごしてきました。
疲れました。感想はそこじゃないんですが、観賞物は数こなすと足にも脳みそにもキますね、うん疲れた。
分かっていても展示物には期限日があるので行かねばならぬのが常なのですよ。
次見るのは現地に行かねばならんので地元に国宝やら秘宝・至宝が来た時はなるべく楽しく無理をします。

今回の元凶は曜変天目茶碗と正倉院の五弦琵琶です。
どちらもこの南国寄りの所にいては早々お目にかかるものではありません。
どっちも国宝だし、琵琶に至っては御物だし。
最初は美術館に天目茶碗を見に行きました。

今回の展示は藤田美術館からお借りした物を筆頭に日本の美ひいては東洋美術を垣間見るものでした。
藤田美術館は明治の実業家藤田傳三郎が収集した美術品を始め親子二代に渡る日本美術のコレクションが収められています。傳三郎は廃仏毀釈で流出する文化財を留める為に私財を投じてこれらを集めた経緯があるようです。
展示物も仏像や経典など仏教関連のものが多数あり、いかに明治の文明開化の頃日本の仏教美術の品々が流出しようとしていたのかが窺えます。
展示物の中の一つ、仏像の後ろの光背も売られてしまうところだったんでしょうか。緻密で美しい一品でしたが、本来前にあるであろう仏のいない装飾は少し物寂しいものにも見えました。

まあ独鈷とか法具とかきらきらしてるから売れそうですけどね、身も蓋もない話ですが。
極楽浄土を表す為にあえて華やかできらびやかにする宗派もありますからね、法具綺麗なんですよ。
逆に削ぎ落としてもそれはそれで洗練された美があります。
五鈷鈴っていうのもありまして、五鈷が把具、持ち手に装飾として施された鈴で儀式の際に鳴らしていたそうなんですが、密教の緻密な装飾とさっぱりした実用部分の鈴がそんな華美と静美の調和を見せてくれます。この鈴がどう鳴らしてどんな音がしていたのか見聞きできないのが残念です。
重厚に響いたのか案外甲高かったのか。
英訳がヴァジュラ・ベルでふきましたけどね。神器じゃないですか雷落としてきそうじゃないですか!


傳三郎は茶道具の収集にも力を入れていたそうで、亡くなる直前まで病床に伏せながらもお目当ての品が売りに出されたと知れば金に糸目はつけぬとばかりに収集に奔走したそうです。
茶入れに茶碗、香合などなど一部とはいえ銘を持つような名品が多くありました。
しかし茶入れがどうも干し柿に見えて困った。
名だたる茶人の手に渡り銘を受け誂えられた干し柿、いえいえ茶入れ。
見る機会がある方はどうぞ干し柿と思って見てみましょう。そして田中と困惑具合を共有しようぜ!

本日のメインの天目茶碗は傳三郎ではなく長男の平太郎が収集したもの。
この世に三碗しか存在しないとされる曜変天目茶碗です。
名にある曜変は窯での変化をいう窯変を曜、つまり星その輝きに準えたものです。
漆黒の釉薬に瑠璃色に浮かび上がる斑文は正に夜空に揺らめき輝く星のごとく。
波紋のようにたゆたい、白い輪郭を残して瑠璃の帯を纏う斑文はまるで自ら放つ光を宵闇の隙間から覗かせているようでした。
そこに宇宙を視るのも納得の彩色です。
しかもこの曜変天目茶碗は外側までこの変化が見受けられます。これ、この茶碗だけなんですって。
手に収まるプラネタリウムですよ。白昼の茶室でもこれをそっと手に乗せると内包する星空が手に入ったのかもしれませんね。
この漆黒と瑠璃色の色彩、何かに似てるなぁと思ったらあれです、ラピュタの飛行石。トンネルの奥の微かな飛行石の名残をハンマーで叩いて溢れて消えた光によく似ています。
茶碗の底に写し取られた輝きがちょっと夢のある光に見えません?


あとは能面も見ましたね。
裏側も少しばかり見えたのですが、証文や使い込まれた跡よりもまるで髑髏のような窪みが印象的でした。
美しく若々しい女面の小面の裏が髑髏の様相を呈しているのは何だか不可思議ですよ、上手く言えませんが。

藤田美術館の至宝、美術館編は以上となります。
まだいくぞ!


次は五弦の琵琶ですが、博物館の開館記念展で来たものでこれその中でも期間限定なんですよ。ちょっと頑張ってはしごしたのは彼女(?)のせいですね、うん。
正倉院の箱入り(御物)ですよ、俗人はおいそれと触るどころか見るのも目潰し覚悟かもしれない、は言い過ぎですがまあそう見れませんよ。侍従職とか就かないと。

記念展示なんで他にもこれ教科書で見た!って奴が結構来てまして。
遮光土器真横から初めて見ました。真横思ったより薄っ!意外と隙間にジャストミートするんじゃないかしら。
火焔土器はどんな感性で作ってるのかつくづく謎ですね。新潟の一部地域しか出土してないところも謎とロマンを呼びます。いつもここにオーパーツのようなぶっ飛んだ妄想が入り込む余地があるんじゃないかと思っているのは内緒ですよ、ふふふっ。

こちらの展示にも仏教関連の品がありまして、三鈷を彫った柄を持つ剣とかいました。
明王さまが持ってそうな断罪ソードですが、あの装飾の柄は聖柄というそうで、ここに来てようやくひじりづかに当たる漢字を知りましたよ。音だけ聞いたことあったけど聖塚だと思ってたわ。
あと五鈷でも三鈷でも英訳はヴァジュラなんですね。やばい霊験あらたかな避雷針に見えてきた。

刀もありましたよ、蝦夷拵ってのがね。
鍔がない儀礼用のもので日本的な装飾なんですがどこか雰囲気が違うのはアイヌの方に伝えられたものだからでしょうか。
刀身は室町の頃ですから案外ざっくりやれるかもしれませんね。鍔がない分他の儀礼用よりさりげなく差せそうですし。
刀剣は目の前にすると大概静かに大興奮です。蝦夷拵も大変楽しく見させていただきました。

そろそろ二つ目のメイン五弦の琵琶に参りましょう。
正式には螺鈿紫檀五絃琵琶です。
五弦ある琵琶は現存するものはこれ世界に唯一つとのこと。御物ぱねぇっすね。
お恥ずかしい話四弦と五弦の違いは弦の本数だけだと思っていましたが、頚の形状すら違うんですね。四弦は曲がっているのに対して五弦は真っ直ぐです。
しかも五弦は琵琶自体もさることながら奏法すら絶えて久しい。残っていることが奇跡のような存在です。

流石国宝というか期間限定というかドナドナされながら並んでの観賞ですよ。何となく近寄るなんて出来ません。モナリザ初来日よかマシだろうけど世界唯一の御物のガードは固い。
一応全貌を見られるわけですが、まあ螺鈿の装飾が多いこと。空白部分は貼れるだけ嵌めれるだけやっとけ!と言わんばかりにどこもかしこも螺鈿です。正面裏面、頚も側面も螺鈿ラッシュ。金なら目潰しできそうです。白蝶貝や夜光貝ですから淡い燐光のようで済んでいますけど。
正面には駱駝に乗って琵琶を爪弾く胡人が描かれています。彼が弾くのは四弦琵琶です。頚曲がってます。何で五弦じゃないんでしょう?五弦はインド発祥で尚且つ四弦より難しかったからでしょうか。

これ弾けるの?と思っていたら会場で単調ながら弦の音が。昭和二十七年に収録された音源を流していたようです。
現行の四弦琵琶すらよく分かっていない素人なので何とも言い難いのですが、それぞれ何となく音の高低が違うような気がします。第三弦がちょっと他より高かったかな?
陰陽師の玄象っていう付喪神憑いた琵琶を思い出しました。奴もたしか五弦だった気が。君もこんな音がしたのかねぇ。
しかし音の確認とは言え唯一無二の物を弾くのはどんな気分なんでしょう。しかも御物。
世が世なら一族郎党巻き込んだ大惨事に発展しかねないよなぁと思いながら耳を傾けていました。

裏面には花の模様があるのですが、螺鈿で花の一枚一枚を表現しているだけでなく葉脈?っていうんでしょうか筋まで刻まれていました。まるで絵画のように細い筆先で書き付けたような繊細な線が螺鈿に施されていたわけですが、これだけでも一級品であることが窺えますねぇ。
これが千年を超えて尚存在し今まさに楽人が手に取り爪弾いてもなんら不思議もない状態であることが非常に感慨深いです。
時を超えて邂逅するその僥幸が美術館や博物館にいく醍醐味なのだと思いますね。

あとはそう教科書におわす埴輪もいました。踊る人々だったかな?英訳がダンシング・ピープルで「……え、古代のパーティーピーポー?」って思った田中悪クナイヨ。


とまあこんな感じで博物館編は終演です。
そして美術館、博物館巡り備忘録もどきもおしまいです。
長らくお付き合いありがとうございました。
また何か古きものと邂逅したら書きに参りましょう。刀剣とかね。あー鬼丸国綱みたいなぁ御物だけど侍従職管理下だけど。
それではいずれまた。



[日 常]
2015/10/27(火) 17:12:54
コメント(1)

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