愛おしい人


真夜中。不意に目が覚め、ブレンダンは腕の中で眠る名前の姿に笑みを零した。
安心しきった無防備な顔に募る想い。

ふとした瞬間、自分は本当に名前の事が大切で愛おしいと思った。

対アラガミ戦線の激戦地、極東支部。その最前線に立つ討伐班第一部隊隊長。
誰よりも多くのモノを抱え、守る彼女を守りたいと思うようになったのはいつからだったか。
出会った当初は小さく頼りげのなかったその背中に、気が付けばいつも守られている。

一度はこの星を捨て、呪われた航海に出る事を選んだ裏切り者。
そんな自分でも変わらず好きだと言ってくれた名前に、涙が流れた。

好き、大好き。だからずっとそばにいて。

そう言って縋るように背中へ回された震えるか細い腕。
それは此方の台詞だと、言葉にする代わりに名前の身体を力強く抱き締めた。


世界でただ一人。最愛の人。
もう二度とこの手を離したりはしない。


「?? …ブレン、ダン……?」
「ん? あぁ、すまない。起こしたか?」

ブレンダンが腕の中で眠る名前を抱き寄せると、その僅かな動きで彼女が目を覚ましてしまった。
起こしてしまった事への申し訳なさと、同時に自分の名前を呼ぶその声に愛おしさが募る。

今度は思い切り、互いの身体が隙間なく埋まるくらいに抱き締めその目元に唇を寄せるブレンダン。
するとくすぐったかったのか、腕の中で名前がクスクスッと肩を震わせて笑った。


――嗚呼。本当に愛おしい。


「…愛してる、名前。世界中の誰よりも」
「どうしたの、急に」
「言葉に、したかったんだ。俺がどれだけお前の事を大切に思っているか、知ってほしい…」

まるで閉じ込めるかの様に加えられた腕の力に、圧迫された肺から息が吐き出される。
イタズラに目の前の耳を甘噛みすると、少し甘い名前の声が唇から漏れ聴こえた。

「私もブレンダンが大切で、誰よりも大好き。私、ブレンダンが居ないと息が出来ないんだよ。知ってた?」
「それは、知らなかった…」
「ふふふっ!」

鼻先が触れる距離で互いの顔を見て、自然と浮かぶ笑顔。
柔らかさのある頬に触れると本当に嬉しそうに名前が目を細めるものだから、ブレンダンもつられて目を細める。

「だからね、ブレンダン。だから、ずっと…ずっとそばにいて」
「あぁ。お前が望むなら、ずっと…」

触れ合うぬくもり。自分の名前を呼ぶ声。
向けられる優しくあたたかい笑顔。

ついばむ様に何度も唇を重ねて、最後にその吐息すらも奪う様に深く口付ける。


ふとした瞬間、自分は本当にナマエの事が大切で愛おしいと思った。

名前。誰よりも愛おしい人。


 Back 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -