下膨れの四角い顔にバランス悪く細い目とデカい鼻と薄すぎる唇が散らばっている、とんでもないブスだ。最初はそんな感じに思っていた。
喫茶店で目の前に座る彼女はさっき一緒に見た映画について熱く語っている。いつもよりほんの少し開いた彼女の瞳にはどこからかの光を取り込んでか、はたまた自発的に光を宿しているかは知らねぇがキラキラとした光沢を持って輝いていた。カップチーノでルージュのとれた立体感のない唇でずっと俳優やら監督やらについて一生懸命話しているが、話の内容なんてあんまり頭に入ってこず、彼女の光る瞳ばかり見つめていた。


「それでまたあの監督顔だけの派手な役者使ってしまって!て、思ったの。だけどはまり役だし演技はそこまでうまくなかったけど、周りの役者が本当に上手で…何?」


気づいたら相槌さえうたなくなった俺を不審に思ったようで彼女は話すのを止め、怪訝そうな顔を少し傾けた。


「いや、別に。まあヒロインは顔のいい方が映えるよな」

「そうね。ブスじゃ視覚的に映えないわね」

顔のいい方が、というのを思い切り強調して話せば俺の意地悪は通じず、彼女は顔に笑い皺を深く刻み込み笑った。
そうだ。俺は彼女のこういうところが好きなんだ。コンプレックスを受け入れ自分で笑って見せる、そんな彼女に俺は一種の憧れのような気持ちを抱いている。
彼女は笑顔のまま、再び映画について語りだした。光の費えない瞳で笑顔で語る彼女が愛おしく、どうしようもなく可愛い。彼女が映画の世界に浸るように俺は彼女という世界に浸っていた。


「可愛い」

「は?ど、どうしたのW?」

「可愛い」


頬杖をつき、ぼーっとしながら呟いたもんだから彼女は驚いたように顔を歪ませた。だが俺が可愛い、と連呼すれば彼女は耳を赤くさせ、笑って「そういってくれるのはWだけだよ」という。そんな愛らしく、曇りのない彼女を天使のように感じる俺はどうしようもないくらい彼女に恋してるようだ。







ブス恋!
(その瞳に絆された)



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