「うぅ…」

「生理痛か?」


お腹を抱えながら唸っているとWがとんでもないことをいうので裏拳でWの肩あたりを叩いた。恋人だからって許されるとでも思ったのだろうか。この変態め。
叩いたのにも関わらずWは口の端を吊り上げまだ何か言ってきそうな顔をする。Wの口達者で策士なところは十分心得ていて、私が何をしようとも無駄であることは承知だが、身構えた。


「単なる腹痛ですが、なにか?」

「いや、別に。だが、腹の強いおまえが腹痛なんて珍しいな。拾い食いでもしたのか?」

「し、て、ま、せ、んっ!」

「ふん。なら日頃の行いが災いしたんだろうな」

「私日頃の行いいいもん!」

「はっ。どうだか」


いつものようにからかってくるWには少しムッとなって反論するが、嬉しくもある。これを友達にいうと、「ノロケ乙」なんて一蹴されるけど。
しかしまあせっかくのデートだというのについてない。一緒にいて楽しいのに、些か体調が優れないと常に不安を抱えたみたいに気持ちが落ち着かない。Wには悪いけれど今日は早めに帰らせてもらおう。


「ごめんね、体調悪くて」

「少し休憩するか?」

「いや、大丈夫だけど、明日用事あるし今日は早めに帰りたいかも…」


途端Wの表情がほんの少し固くなった。ああ、言い方間違えたかも。やっぱりもっと遠まわしに言うべきだったかな。


「今回のデートの後はお城みたいで中も広いホテルに泊まりたいといっていたのはどこのどいつだ?」

「わー!止めてー!」

「しかもおまえ、『いつもは私の家で親がいないときしかできないし、シングルベッドしかないビジネスホテルに泊まるからたまにはラブ…』」

「黙って!」


いつかの私が言ったことをそっくりそのまま道端で言うので、慌ててWの口を両手で塞いだ。しかし直ぐに両手を握られ口から離された。


「耳が赤いぜ」

「うるさい!」


両手で耳を隠しながら耳にかけた髪を下ろしたが、Wに片側の髪を梳かれ再び露わになった耳に優しくキスされた。しかも耳元で「俺はおまえとヤりたい」とかなんとかいうので、ぞくり、として耳だけではなくどこかも熱を帯び始めた。お腹が痛くてそんな気分じゃないのに。私の馬鹿。変態。いや、違う。こんなことで身体がWを求めてしまうくらいWのことが好きなんだ、きっと。
しかし明日は大事な用がある。症状が悪化したら困るからここは我慢しなくては。
では、どう断ろうか。Wの機嫌は損ねたくないし。あ、そうだ。これをいえばWも手出しはできまい。
私はおずおずと恥じらいを感じる乙女な風を装って上目遣いにWに話した。


「あのね、私もしたいけど…実はこれ腹痛じゃなくて生理痛なの」









腹痛がなんだ
「おまえが相手なら生理中でも俺はヤれる。それにおまえの月経は把握してるぜ、嘘つき女」
「へ、変態!」

(デート後お腹が痛いまま素敵なお城に連行されました)



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -