※失恋します



恋愛などデュエルにも満たない簡単なゲームだと思っていた。女を落とし縛り付けるのは簡単だとも思っていた。実際そうだった。いや、途中まではそうだったと言った方が正しいのだろう。

一年も付き合っていた恋人に話がある、と呼び出されいってみれば別れ話を切り出された。馬鹿な、と思った。彼女は俺と別れるなら死ぬとまでいった人間なのだ。別れることがきるはずはない。だが、彼女は今目の前で俺に対する不満をつらつらと憎悪のこもった語気で述べている。俺は半ば整理のつかない頭で黙って彼女の言葉に耳を傾けた。


「恋の駆け引きだかなんだか知らないけど私はあなたにいっぱい傷つけられたわ。わざわざ嫉妬させるようなことをして私を弄んでいるんじゃないのって何回も疑ったわ。まあ実際あなたは恋することも正常に愛することもできない人みたいだけどいくらなんでも酷すぎよ。人道に反するわ。それに自分が頭がよくて器量もいいから女は皆自分に服従するって思いこんでるのが見え見えなのよ。あなたみたいなのは将来痛い目みるわよ。ああ私とんでもない悪魔と付き合ってたわ。なんであなたがこんなに最低な人間って気づかなかったのかしら。次は優しくて誠実な人を選ぶわ」


彼女はそこまで言うと息をついて、また口を開きかけた。まだ言うのか、と俺は彼女が何かを言い出す前に静止をかけた。
なるほどな。少し彼女を蔑ろにしすぎていたかもしれない。今まで彼女を不安にさせることでつなぎとめていたがそれは一年経った頃から効かなくなったみたいだ。早く気づくべきだった。
だがまあ女の一人くらいいなくなっても困らないだろう、と自分の中で見栄をはってみたが、正直彼女を手放したくはなかった。これでも今までの恋人の中で一番愛し、苦労して駆け引きをしながら付き合ってきたのだ。それに彼女を繋ぎとめることができる要素は駆け引きだけじゃない。俺そのものがその要素だ。別れ話をしようと彼女が俺から離れるわけがない。


「大分聞き捨てならないんだが。俺みたいなのはなんだと?俺のどこが不満なんだ?」


とにかく、別れようと思った原因を少しは排除してやろう。だからとっとと不満を言えよ。
彼女を睨みつけるように見つめると、彼女は俺から目をそらしため息をついた。それが非常に腹立たしく俺の癪に障った。


「はあ…結局あなたは自分しか愛せないのね」


もうあなたなんかに興味はない、と彼女は俺から離れていく。
そんな馬鹿な。ありえねぇ。どこまで俺を苛立たせる気なんだ、こいつは。
俺は背を向けた彼女の手を引っ張り俺に向かせて抱き寄せた。もう離さない。真剣に愛し、完全に俺に惚れさせてやる。もうどこにも行かせてやりはしない。









砕けるプライド離れる心
「俺から離れるなよ」
「………」



(彼女は何かを惜しむように黙って俺の腕を掴んでいたがやがてその手も離れた)



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