「またね!」

「ああ。気をつけて帰れよ」


凌ちゃんの家をでて、駅に向かった。車一台は余裕で通れる幅の道を時々電灯に照らされながら歩いた。今日は凌ちゃん家で夕飯をごちそうになったから今度は高い菓子折りでも持って行こうかと考えながら歩いていると、二ブロック程先の道に人の気配があった。凌ちゃんの見送りをいつも断ってはいるけれど、その理由はカイト君にバレないためだったから遅くに一人で帰ることに不安を覚えていた。だんだん近づくにつれ、それが誰だかわかってきた。とても見覚えのあり、とても身近な人だ。思わず歩みが遅くなり、曲がって逃げたい衝動にかられた。いつもなら走って抱きつくところだけれど。なんでカイト君がいるのだろうか。体中が緊張してきて、手に汗をかいてきた。
電柱のある向かいにカイト君はいて、傍らにバイクがあるのでそれに乗ってきたのだろう。私は道路の真ん中で立ち止まってカイト君と向き合った。暗いおかげでそらしたい目は見れた。


「カイト君…」

「随分遅いご帰宅だな」


カイト君の声はいつもより低く、怒りを含んでいるように聞こえた。怖い。いつものカイト君じゃない。バレたんだ。凌ちゃんと遊んでることが。やだ。カイト君に嫌われたくないよ。


「カイト君、あのねあのね、私…」

「言い訳は聞きたくない。帰るぞ」


手首を捕まれ引き寄せられた。ヘルメットを被せられ、カイト君はバイクに跨った。乗れ、と言われて後ろに乗ったけれど、なんだか怖くてカイト君に腕を回せなかった。カイト君は無言で私の両手を引っ張りカイト君の体に私の腕を回させた。カイト君の体は冷たかった。

カイト君は私を家まで送り届けてくれた。バイクから降りてヘルメットを返すと、携帯を貸せと言われた。メールにはパスワードをかけてあるから躊躇なく渡すとカイト君は黙ったまま私の携帯を操作した。カイト君の顔が怖いのでドキドキしながら見ていると、カイト君は顔をあげて少し満足そうに笑って携帯を返してくれた。ああ、いつものカイト君だ。カイト君は私をぎゅっと抱きしめてキスまでしてくれた。さするように背中から腰へと手を下ろして離すのですごくドキドキしてしまった。
カイト君がバイクに乗り、私はじゃあね、と手を上げるとカイト君は私の手をつかんできた。


「俺以外の男には関わるな」


じっと目を見据えられ、低い声でカイト君は言うので不安になりながらもカイト君の手を握ろうとしたけど握れなかった。すぐ手は離されカイト君はいってしまった。
家に入って凌ちゃんにもう遊べないと連絡しようと思ったらアドレスが消えていた。しかも他の男の子のアドレスもなくなってた。
カイト君の嫉妬に少し嬉しさを感じながらも同時に言葉にならない何かもやもやとした感情を抱える自分に嫌気がさした。









渦巻く銀河
(何故かキスしてくれたときからドキドキが止まらないの)



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