死んでいる、という表現が納得いくだろう。目の下に青い隈をくっきりとつくり、いつもより閉じた目はパソコンの画面に向けられて、いつも正した姿勢は猫背になって、常にキュッと上がった口角は上限月を描いているやつの様子を一言で表現するならば。奴らしくない様子に苛立ちを覚えながらもやつに近づいた。


「おい」

「なんだ…長官ですか」


ちらり、とこちらを見てやつは作業に戻った。態度まで気にくわない。前まで俺をみればへらへら笑って挨拶してたくせに。


「なんだ、じゃない。データベースに入り込めたのか?」

「あ、そっか…まだです」


姿勢を正しキーを叩き始めるが、すぐに猫背になる。気持ちが悪い。誰だ。こいつは一体誰なんだ。


「貴様は誰だ?」

「はぁ?誰と言われましてもいつもの…調子ではないですが私は私です」

「違う…」


眉頭を下げ、自分を嘲笑するように笑う姿を見て思わず呟いた。やつは首を傾げながらも再び作業に戻った。
違う。こいつはこんなやつじゃなかった。こんな風に卑屈に笑うやつじゃなかったはずだ。何故そんな風に笑う。何故そんな目をする。気持ちが悪すぎる。こんなのは堪えられん。やつは自分の気持ちの悪さに気づいていないのだろうか。


「おい」

「なんですか?」

「待っていろ」

「何をですか…?」

「明日になればわかる」


今のこいつが前のこいつに戻り、一切変わらなければいいのだ。誰にも影響されることなく、ずっと。









俺が取り戻してやる
(だからさっさと早く前のおまえに戻れ)


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