使えないドングリピエロのさらに使えない部下が突然やってきたと思ったら隣に来て体育座りして泣き始めた。


「うっ…う…うう」

「見苦しいぞ」

「だ、だってぇ…ぅ…く…ああ」


いらつく。訳も分からず泣く姿が非常に腹立たしい。


「泣くな」

「聞いて…ください。彼氏に、ふ、ふられたんです…」


呆れた。そんなことで泣くのかこいつは。恋人が死んだわけじゃなかろうに。そんなことよりこんなやつに恋人がいたという事実に驚いた。へらへら笑ったり、誰よりも真摯に仕事に取り組むが失敗ばかりしたりする馬鹿に恋人がいるとは世も末だな。大方その彼氏とやらは紐かなんかでこいつを当てにしてたのだろう。真面目で馬鹿なやつほどゴミに引っかかるものだ。


「好機と思えばいいだろう」

「そんな…!長官の馬鹿!私カズがいないともうだめなんです!ああ、付き合い始めの頃に戻りたいよぉ」

「……戯言を」


俺がそう言うとやつはさらに激しく泣き始めた。いい気味だ。
この時代の人間全てが憎くて憎くて仕方ない。こいつらの所為で未来の愛する者を失ったのだ。だからこいつも同じ目にあえばいいのだ。過去に戻りたいというなら過去に戻って、その恋人が死ねばいい。こいつの目の前で。


「もういいです…長官のところに来た私が馬鹿でした」

「ああ。馬鹿は早く帰るがいい」

「言われなくとも帰ります」


よろけながら立ち上がり、真っ赤に泣きはらした目を隠さず俺を睨んで歩いていく。
何だ?意味がわからんぞ。わざわざ俺の所に来て泣いて帰るなど理解できん。しかも一方的に睨まれる筋合いはない。
すっきりしない蟠りが俺の頭にあり、イライラした。ここで帰したら気分が悪い。


「おい」

「なんですか?」


無表情で馬鹿はさっと振り向いた。いつものへらへら顔とは打って変わって目尻と眉があがり、今にも噛みついてきそうな顔だ。何かいいたげにもみえる。恐らく俺に反抗したいのだろう。その気力もないらしいが。


「仕事はドングリピエロに預けておけ」


特に用事もなく呼び止めたものだから適当に言った。やつはどうでもよさそうな顔をして今度こそ俺の前から去った。









彼女がそれを失った日
(やはり釈然としない)


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