買い物を済まし、館へ戻ると、ジンがカイト様に馴れ馴れしく一方的に話しかけているところであった。
慌ててカイト様が座る玉座のある階段したに走った。


「カイト様ー!ただいま戻って参りました!」


カイト様に向かって買い物袋を高く持ち上げ、アピールした。ああ、ご苦労って言ってくださらないかな。


「さあ、私がカイト様にそれを捧げましょう。お貸しなさい」

「なによ!私が買ってきたのよ!」


ジンに右手に提げた買い物袋をとられそうになったが、さっと後ろに避けた。私よりもずっと背の高いジンは前屈みに腕をさらに伸ばしてきた。
私はジンから離れてジンの後ろに回ったけれど、ジンは諦めずに私に近づいて買い物袋に手を伸ばしてくる。


「もう止めなさいよー!」

「そうはいけません!カイト様により忠実でより有能な者がカイト様にお渡しすべきなのです!」

「だったら私が渡すべきでしょ!あんたの百倍はカイト様に忠実なんだから」

「何を馬鹿な!私の方が千倍忠実です!」

「そしたら百万倍私の方が忠実なんだからね!」

「私はその一億倍は忠実です!」


ついに片腕を掴まれ、逃げられなくなったところを空いた手の方であっさり買い物袋を掴まれ引っ張られた。が、私はとられないように買い物袋を思いっきり引いた。


「しつこいわね!」

「そちらこそ!」


ビニールが程よく伸びていくがこの際問題ではない。これはどちらか勝った方がカイト様の配下として上であるのかという命がけの争いである。負けるわけにはいかない。
しかし大問題が起こった。私が乱暴に自分の方に買い物袋を引っ張った瞬間ビニールが破れ中の物が飛び散った。


「ちょっとどうしてくれるのよ?」

「あなたが悪いのです」

「なんですって?」


口論しつつもジンと地面に落ちたのを拾った。落ちたものをカイト様に捧げるのは忍びないけれど、ジンよりも早く捧げるために急いで階段を昇った。カイト様の足元に買ってきたジュースやらアイスを置き目を閉じて合掌した。隣でジンの気配がした。多分同じく足元に供物を置いているのだろう。いつものお祈りを終えて、振り向くと、ジンは既に階段を降りていて跪いていた。顔を上げてカイト様をまっすぐ見つめている。多分私のことも視界にはいっているだろうけど、その目はカイト様しか見ていなかった。
ダイナミックジャンプで階段下に着地して、ジンを蹴ってみた。


「っ!何をするのですか?」

「別に」


そっけなくいうと、だからあなたはどうちゃらこうちゃら、と言われ腹がたったからもう一発蹴って、笑顔でちょっと言ってみた。


「ジンよりカイト様が好き」









崇拝と好きの違い
(そんなこと知っています、と訝しげに彼は言った)
(そんなことを思う彼にさらにむかついた)




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