今年の夏は例年より暑い。それなのに彼はロングコートに身をつつみ、指の第二関節に届くほどのデュエルグローブまでしている。しかもそれだけではあきたらずピッチピチのタートルネックにボトムは勿論ロングのブーツカットタイプでやはりブーツ装備というある意味大変変態な格好である。

見てるだけで暑い、というのを通り越して呆れて見てられないのでアイスを買ってあげた。ついでに自分の分も、と思ったけれどお金がない上、彼にアイスでお腹壊されたら困るのでアイスはちょうどいい量で二つに分割できるパピコにした。
シールを貼られた包装袋からパピコを取り出し二つに割って片方を押し付けた。


「はい」

「ありがとう」

「いーえー。暑いからね」


日陰にあるベンチに座っているにも関わらず暑い。しかしパピコは思うように溶けないもので手でぐにぐにして中身を溶かしながら、パピコを吸った。


「なんか魂すってるみたい。ディメンター気分」

「……」


カイトはやっぱり黙った。誰よりも優しいカイトのことだから気にしてるようだ。ナンバーズを捕まえるには魂ごと回収しなくてはならない、ということを。
でもカイトは気にしなくていいと思う。ハルト君を助けるのに精一杯だから。
そう口には出さなかった。カイトは迷ってるようだったし、あまり考えないようにしているようにもみえた。私が余計なことをいったらカイトを間違った方向に導いてしまうかもしれない、との恐怖があるからだ。
だから私は今まで通りただ今と未来のカイトの邪魔になるものを排除していればいいのだ。責任は私が負う。カイトは重荷をしょいすぎだ。


「あのね、私ずっとカイトに協力するから」

「ん?ああ」


カイトは一瞬訝しげな顔をしたが、少し悲しそうに微笑んでパピコを食べた。

カイトがハルト君を救えたとき、カイトは無事にハルト君と元通りの暮らしに戻れるかわからない。カイトが幸せになるためには、今までやったナンバーズ狩りの事件に関することはあってはならない。ハルト君が知ったら悲しむだろうし、ハルト君の悲しみはカイトの悲しみでもある。そんなことは許さない。カイトが幸せになって、カイトのこの悲しげな笑顔があの頃の温かい笑顔に戻るには、きれいな過去が必要なのだ。過去も現在も未来も過去であり、過去になる。だから今のうち消せるものは消し、そして未来、汚いものも消してしまうのが一番である。

カイトはただ私をシフト制勤務のハルト君のお世話係りと情報伝言係りにしか思ってない。知らないんだ。私がしてること。でもカイトが汚い私を知ることが汚く、きれいな私をしっていることは汚くない。

だから、だから、カイトとハルト君と私の繋がりは永遠に切れない。事をうまく運べば、絶対に。


「ハルト君、治るといいね」

「ああ、絶対に俺が治す」


暑いのになかなか溶けないパピコをまた強く握って食べた。









いたみわけパピコ
(食べきった後の容器はゴミ箱へ!)




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