今日はいつものデスクワークじゃなくて初の現地調査だった。いつもは室長がコソコソいってコソコソ帰ってくるけれど、今回は私も連れていってくれることになった。やったね。昨日散々騒いでお願いした結果だね!
小型のヘリを借りて、やってきたのはサテライトの廃墟だ。ヘリは廃墟の外に無理やり止めてもらった。飛行士に、行ってくる、と告げて廃墟へと足を運んだ。
元は何かはっきりとは分からないけれど、科学者が使うような壊れた機械ばかりがあるから多分何かの研究所かな。屋根は壊れていて、そこから見える景色が不思議で浮いて見えた。床にはパイプ管やゴム管などの多数の管が転がってるけれどそのほとんどが機械に接続しているわけじゃなく、途中で切れている。
ここに何があるんだろ。データ回収、とか室長が言ってたけど。今回私の役目は機器の運搬と見張りだけだから、廃墟の入口付近で回りを見渡しながらもちらちらと室長の作業の様子を見ていた。よひょひょい、と不気味な声を発しながらやってるのがさらに気になる。
約一時間が経過した。流石にサテライト…下層階級地区の様子も見たくないし(目を覆いたくなるほど酷い!)、遠目で室長のよひょひょいも見るのも飽きた
一人ストレッチを始めてると、「ちょっと来なさい」と言われ室長のもとに走り寄ると、機器の回収を頼まれた。
プラグを丁寧に抜き、ケースにしまい、薄型のパソコンも一緒にまとめた。
見落としはないか、と立ち上がると、突如廃墟に強い風が舞い込んできた。
「なに?なに?」
機器を必死に守るように抱きしめた。それとともに聞こえてきたのはプロペラの音。
なんでヘリが…?
「治安維持局か!!」
最初に聞こえたのは、はっきりした男の怒鳴り声。入口から数十人の影が飛び出してきた。さっきの男の声に続くように数人の声が聞こえるがヘリの音と、一辺にまくし立てられてる所為で何を言ってるかはわからなかったけど、絶対罵倒されてるんだ、これ。ここにしてようやく、私達が乗ってきたヘリが勝手に逃げた理由がわかった。この人達の襲撃に合いそうになったんだ。
サテライトの住民らしき人達は私達に向かって走ってきた。入口からはかなりの距離がある。さっき走ったからわかるけれど、だからって逃げれる気はしない
もう最悪。さっき見張りしてるときには人影さえ見当たらなかったのに。
「室長どうするんですか!」
「ちっ。仕方ありませんね」
室長が手を振り上げたかと思うと、服の袖から何やら黄色の風船のような物がでてきて急速に…浮いた…だと?
「ちょっ、そんなのありぃぃぃぃいいい!?」
急いで室長の足首を機器を持っていない方の手で掴んだ。室長が折れませんように!風船が割れませんように!!
すごいことに私の体重が加わったのにも関わらず、風船はなおも上昇し続け、もう廃墟の高さを越えていた。が、室長に頭をげしげしと蹴られた。
「なんて重いのですか、あなたは!今すぐ離しなさい!!」
「失礼な!無茶言わないでください!!今持ってるのは高価な機器なんですよ!それでなくても可愛くて有能な部下を捨てる気ですか!八代先まで呪いますよ!!」
「しつこいですね。機器は惜しいですが、あなたが消えることには問題はありません。さあ、早く離しなさい!!」
風船飛行
(さらに踏みつけられたけど、私は耐えた)
(帰ったら復讐してやる、と誓って)
「誰が離すもんかっ!!」