ある日のこと。私は不景気の最中を喘ぎ、物価の高騰に怒り、幸薄な自分に絶望していた。

午後二時頃、この時間だと仕事に一区切りつく頃なので、室長にお昼をたかった。


「不幸だ。不景気だ」

「……」

「ああ!お金がない!」

「……」

「なんで給料が下がるのかしら。私はこんなにも頑張ってるのに…!」

「おや、もう二時ですね…」

「今日もお昼抜きなのかしら私!このままじゃ私死んでしまうわ!」

「さて、昼食を摂りにいきますか」

「室長!是非ご一緒しますでございます!」

「…ついてくるのは構いませんが奢りませんよ」


なんて、手厳しいことをいうけど、向こうにいったら絶対奢ってくれるだろうよ。ウヒヒ

珍しく徒歩で室長に着いていくとパンの食べ放題屋さんだった
食べ放題といえど外観からしてリッチなようで周りの客も上品な服装をし、立ち振舞いも気品に溢れてるので緊張しながら中に入った


「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」

「一…ああ。二名でしたね」


わざと!?わざとですか!?この室長め!


「そ、それではこちらへどうぞ」


ウエイトレスの案内に従って店の奥まで歩く
周りを見渡すと、どれも小さくておしゃれなテーブルに意匠の凝ったデザインの椅子だ。唯一窓際の椅子が柔らかそうなソファーだ


「お席の方はこちらです。それではお好きにどうぞ」

「ありがとうございまーす」


案内されたのは部屋の角の席で、私はほぼ空のお財布をソファーにほっぽり、さっそくパンを取りに席をたった。

デニッシュにフランスパンにドーナッツ。他にも名前のわからないものが沢山、店の中央のテーブルに並べてあり、私は遠慮なく順番に一種類ずつ取り皿に盛っていった。
一つの取り皿がいっぱいになってから、大好きなアールグレイのホットでコップを満たし、ミルク、ガムシロップを片手の中に収め、横着して一辺に取り皿、飲み物と一緒に席へ持っていった。

席の近くまで来ると、室長がウエイトレスと話していて、何だか新鮮に感じた。
仕事場には男ばっかりだし、室長は室長だから長官以外と話してるところ事態あまり見ない。なんだかちょっとムカムカする。室長め!私がいない間に可愛い女の子と話すなんてずるいぞ!
室長を恨めしそうに見ながら、テーブルに持ってきた物を置いて席に腰を下ろした。ちょうどそのとき、ウエイトレスさんが離れていった。何話してたのかな。
室長をちらちら見ながら、紅茶にガムシロップとミルクをいれ、スプーンでかき混ぜてから、いつの間にか手元にあった手拭きで手を拭いて手を合わせた。


「いただきまーす!室長、先食べちゃいまぶはらひゃふ」

「もう食べてるじゃないですか」

「おいひー」


これが外カリ、中ふわってやつか!なかなかおいしい。

おいしくパンを頬張ってると、突然無機質な電子音がなった。音源は室長のらしく、すぐに電話に出ていた。


「なんと…!すぐに参ります」


室長は立ち上がり、後は任せます、と言う。


「ちょっ!任せますって私お金持ってないんですよーっ!どこに参るんですか!?」

「企業秘密です」

「んなっ!?」


すたこらさっさー、と室長は風のように去ってしまった。

まずい…これはまずい。パンが美味しくても事態がまずい。
どうしよう。どうしよう…。
お金は誰が払うんだ?

ぐるぐる、と頭で考えつつも目の前のパンに手が伸びてしまう。

お皿からパンが消えそうなとき、さっき室長と話してたウエイトレスさんが何かをもってやってきた。


「お待たせしました。本日のオススメメニュー、デュエル・デ・パンです。ご注文は以上でよろしいですか?では伝票のほうはこちらに置いておきますね」


ん。んんっ。

テーブルには頼んだ覚えのない美味しそうなパンとスープとサラダが乗せられ、止めは8700円と書かれた伝票だった。


「あれれーおっかしいなーあへ」


冷や汗を垂らし、焦りながらも手はテーブル上の罠にはまる。サラダいらね。スープとパンうめえ。

さあ、どうしようか。あ、そういえば昼休みもうすぐ終わっちゃう…早く戻らないと
でもお金が…。





「ありがとうございました!また、お越しください」

店員さんの元気な挨拶を背に私は店をでた
レジで貰った、一枚の小さくて長い紙を見た。
そこに書かれてるのは先ほどの値段と治安維持局という文字だった。






ごちそうさまでした
(た、ただいま戻りました)
(遅かったですね。まさか食い逃げして走り回ってた、なんてことはありませんよね?)
(ばんなそかな!ちゃんと払いましたよ。安心してください)

ちゃんと治安維持局に請求されるように署名してきましたから!


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