久しぶりに会った幼馴染と業務外の会話もすることなく、瑠璃を見つけるという任務遂行を目的に、一緒にエクシーズ次元に来た。
転移した場所は街の路地裏で、そこから一歩出れば眼前に鮮やかな色のネオンに包まれた夢のような光景が広がった。エクシーズ次元は事前に様子を見ていたとはいえ、いざ来てみるとかなり未来都市のようで任務を忘れ浮き足立ってしまった。だってこんなところで大道芸ができるって最高じゃないか。
「わー凄い!未来都市って感じがすごくするね。じゃあ、都市部周辺のお洒落なカフェでも行ってくるねー」
昔と変わらない笑顔で朗らかに言って、手をひらひらと振る彼女の腕を掴み引き止めた。
「ピヨちゃん、君は僕から離れちゃダメだって言われたでしょ?」
「その呼び方、まだ覚えてたの?」
「だってピヨちゃんは大きくなってもピヨちゃんじゃないか」
いつもヒヨコみたいに僕にとてとて付いてきて、可愛いなぁって思って付けたあだ名はヒヨコのピヨちゃんだった。デュエルアカデミアに送られる前まではピヨちゃんて呼んでいて、それ以降一度たりとも会ったことがなかったから今更本当の名前を呼ぶのは照れくさかった。
彼女は酷い惚れグセがあるようで、上から直々にデュエル戦士として有るまじき惚れグセが仕事中、及び敵に対しても起こるのか見極めろと仰せつかっている。勿論彼女はそのことを知らない。僕だけが瑠璃を探す事以外に彼女がデュエル戦士に相応しいか見極め、不当なら瑠璃発見後に開始されるハンティングゲームの最中にデュエルディスクを破壊しエクシーズ次元に置いていけと非情な任を受けている。だから彼女の動向を見ることは勿論、そんなことが起きないようにする必要がある。
「どこがピヨちゃんなのかは意味不明だけど、私デニスから離れるななんて言われてない」
「え、えー?そうだったけかな〜。いや、ピヨちゃんいつも人の話よく聞かないでしょ?僕は確かにそう聞いたよ!」
「う。私自信ないや」
やっぱり昔から変わらないみたいだ。全く前途多難だね。
「んで、どうするの?」
「一番手っ取り早いのが大道芸かな。いっぱい人集められるし若い人が多く立ち止まるんじゃないかな」
「それはいいね!デニスの手品みてみたーい!」
彼女は瞳をキラキラさせ笑顔で僕を見つめた。あの頃よりも大分背が伸び、大人の身体へとなりつつある上にさらに化粧を覚えた彼女に再会した時は戸惑った。そして今この時にも彼女のキラキラした表情に戸惑いを隠せず、僕は何も応えずに顔を反らしてしまった。
「デニス、どうしたの?」
「何でもないよー。さ、行こうか」
建物の角の電柱に設置された電光掲示板が広場への道を示しており、その通りを歩きながら惚れやすい彼女が僕のことを好きになってくれないかなぁなんて考えた。