彼女の過去を修正し、邪魔な存在を消した。カズとかなんとかいうあいつの恋人をだ。今日彼女のところに行けば、元の通りの馬鹿面に戻っているであろう。
昨日よりは幾分機嫌がよく、彼女がいるであろう治安維持局の特別調査室の扉をあけた。20台ものパソコンが置かれているうちの一角で彼女はパソコンを食い入るように見つめていた。俺がやってきたのがわかると、顔をあげた。真面目な表情から一転して少し微笑んだように見えた。


「長官、お早うございます!」

「ああ」


何か、違和感を感じた。言葉では表せないような違和感を。彼女の前まで行き、彼女をよく観察した。相変わらず背筋を伸ばし、しっかりとした印象を受けるが、表情はどことなくいつもと違う。しかし、まあいいか。今日のこいつは気持ち悪くない。
そう思ったのはつかの間のことで次のこいつの言葉で頭が痛くなった。


「長官、今日は定時で上がっていいですか?」

「今、なんと言った?」

「えっと…いつも夜遅いから今日くらいは…用事が…」


睨んだ途端尻込みして語尾を小さくしていった。ゴニョゴニョ言いながらも「他の部署」やら「合コン」とやら許しがたい言葉を拾った。


「許さん」

「うう…じゃあいいです。はぁ」


まただ。また、違和感を感じた。しかし、今回ははっきりとわかった。いつものこいつなら、いくら忙しくても仕事を優先していた。何の弱音もはかず、諦めも早いやつではなかった。


「長官、どうしたんですか?」

「あ?ああ…話しかけるな」


彼女は心配そうにしていたが、冷たくあしらった。こんなはずではなかった。
何故だ?彼女の様子を変える原因となった恋人を消したはずだ。しかし、前と違う。どうしてだ。
考え付いた結論は簡単だった。いや、最初から気づいていたはずだ。なのに、気づきたくはなかった。
カズとやらが、以前の彼女を彼女らしくしたという事実に。そう気づいたときには急に彼女の元恋人が腹立たしくなった。








違和感と真実
(おまえに影響を与えていたのはやつだけなのか?)


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