例えいつの時代にどんな場所にいても見つけるよ、とあの人とした約束を守るために時を越え、幾星霜を旅した。やっと見つけた場所は大都会のビルの上で、そこで望遠鏡片手に紙パックのジュースを飲んでいたときのことだった。驚いたのなんのって。気配を感じて振り向いて彼の姿が目に入った瞬間には貴重なイチゴラテを落として軽くぶちまけてしまった。それはそれとして、幾日か幾何年振りかはわからないけれど、感覚としては一日千秋がぴったりな言葉で、そのくらいの思いで彼に再会したのだ。彼の姿は昔と寸分違わず、ただ眼鏡をかけているところは違ったけれど、姿形は間違えなく彼だった。銀に光り輝く綺麗な髪に澄んだ優しい瞳。
ああ、やっと会えた。こんな世に転生していたのね。


「ドルべ!」


駆け寄ってドルべに抱きついた。堪らなく愛しい。あのとき、言えなかった気持ちを今なら伝えられる。
だけれど、私が言葉を発する前に彼によって肩を押され引き剥がされてしまった。


「君は誰だ?私を知っているのか?」


ドルべは私と数歩離れてから怪訝そうな表情で聞いてきた。
そんな、まさか記憶がないなんて。


「ドルべ?私だよ?覚えていないの?」

「私は君を知らない。知るはずがない」


泣きそうになって必死に尋ねても返ってきたのは否定の言葉で、しかも不信感と不快感が混じったような声色だった。
そんなそんな。どうして…?
とてもじゃないけれど何かを論理的に考えられる状況ではなかった。それでも私が導きだしたのは簡単な答えだった。
転生したら記憶がないんだ。
当たり前のことだった。どうして今までそれに気づかなかったんだろう。元々この時を越えるという特別な能力を持っていたからか何でもできる気でいた。それにたまたま出会ったドルべにたまたま初めて恋をしたわけで、今まで転生について考えてこなかったし、転生したドルべに会うことしか考えていなかった。
予期せぬことにショックで受け入れがたかった。信じたくなかった。ドルべが私を覚えてないなんて。


「私のこと本当に覚えてない?」

「記憶にあるわけがない」


再度の質問もばっさりと否定された。軽蔑するかのような冷たい瞳は私を見つめていて、それは明らかな拒絶の色だった。その時例え私の記憶があっても相手の記憶がなければ時を越えた愛など存在しないことに私は気づいた。








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