私が好きになる人には必ず別に好きな人か恋人がいた。最初の頃は諦めず想い続けアタックだって何回もした。何時の頃か、途中で諦め始めた。だって、結局皆振り向いてくれなかったから。
そして今回久しぶりに気になる人ができた。転校生のアリト君だ。たまたま席が近くて、転校してきたばかりで不慣れな彼に色々御世話してたらいつの間にか惹かれてた。
負けん気が強くて明るい彼はとても眩しくて素敵だ。魅力のある人だからか彼を狙ってる子は何人かいて、別にそれは気にならなかった。だけれど、やっぱり彼には好きな人がいた。あのとても可愛らしい観月小鳥ちゃんだ。この前猛烈にアプローチをしてるところを見てしまったのだ。
また、今回も諦めようと考えて悩みながら何日か過ごしていた。


「おまえさ、好きなやつとかいんのか?」

「え、えー」


放課後、アリト君は帰る仕度もせずに席についたまま両足を投げ出し、両腕はだらりと下げ、ぼーっとしていた。帰りの準備で、わざともたもたしていた私に、アリト君は上の空で会話を振ってきた。しかし、突然のことで私は何も言えないでいた。


「いないのか?」

「ん〜秘密かな!」

「なんだよ…はぁ」


アリト君はため息をついて頬杖をつき、窓の外に視線を移した。観月さんのこと考えて、落ち込んでるのかな。あまり上手くいってないみたいだったし…。私にとってはいいことなんだろうけど、アリト君が落ち込んでいるところは見たくないなぁ。


「アリト君が元気ないなんてらしくないよ」

「オレらしくない、か。まあ、その通りだな」


アリト君は腕を組んでうんうん頷く。良かった。少し元気になったみたい。


「何かあったの?」

「いんや…なんというか。オレってさ、今までストレートにアプローチしてたんだ」

「好きな人に?良いことじゃない」


アリト君のそういうとこ好きだし、と心の中で付け加えて私は笑顔で相づちを打った。


「でもよ、上手くいかなくって…」

「そっかー」


どうやら、アリト君は観月さんを諦めたみたいだ。少し安心したのと同時にアリト君が可哀想に思えた。失恋は辛いのを知っているから。


「よくよく考えたらあのとき、もうまくだった」

「え。網膜?」

「いや、もうまくだって。恋にも、う、ま、く!」


それは恋に盲目って言いたいのかな。


「たからよ、次からはちゃんと相手のことを知って、相手にも自分のこと知ってもらおうと思ったんだ。たった今」

「今?何、思いつきー?」

「ああ。だって、おまえ落とそうと考えたんだけどよ、オレ自分の話ばかりして、そういやおまえのこと何も知らないからよ」

「え。何言ってんの…?」


耳を疑った。私を落とす?それってつまり…そういうことなの?
な、なんて直球なんだ。全然変わってないじゃん、アリト君!
私は急に顔に熱が上るのを感じ、アリト君から顔をそらした。運よく夕日が教室に射し込み、赤い日が私とアリト君を照す。


「だから、オレはおまえのこと…」

「ま、待って!!えーと、えーと。ごめん!帰る!」


鞄を掴みバタバタ、と走って教室を出た所で深呼吸。色々な考えが私の頭の中を駆け巡った。駄目、嘘。アリト君が私を好きなんて。なんで?どうして?生まれて初めての相手からの告白に戸惑いを感じた。両想いなんて作り物の話にしかないと思ってたし、今まで異性から好かれた経験なんてなかった。
ああ、どうしよう。私は、私は恋をしてもいいのかな?
諦めずに、本気になってもいいのかな?
直感だった。それ以上何も考えずに、私は教室に戻りアリト君の元に駆けていった。







恋愛に落ちいる





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