野音



野田×音無

「嫌いだ!嫌い嫌い嫌い!野田なんか大っ嫌いだ!」
「俺も貴様なんか嫌いだ!嫌いなんてことばもおこがましいほど貴様が嫌いだ!」

同じ単語を何度も繰り返すまるで小学生のような喧嘩を目の当たりにしてもゆりっぺが怒鳴らなくなったのは早、3日前からだ。慣れたのだろう。ほかの戦線メンバーもまたかといったように自分の世界に溶け込んでいた。

だから、今回の二人喧嘩はいつもと少し違うこと気づかないのだろう。…ただ一人、直井だけは気がついていたようだが何かを企んでいるらしく止めに入らない。

「あぁもう!野田なんか知らねえ!」

そういうとドアノブに手をかける。イライラしていて力強く握るが壊れることはない。一応心配したのか後から日向が声をかける。

「どこ行くんだー」
「コーヒー飲みにいってくる。すぐもどってくるから」
「ふん、勝手にしろ」
「いわれなくても」

野田に口をはさまれさらに不機嫌になった音無は勢いよくドアをしめ、そのままいつもの自販機の前まで走って行った。

「…はぁ、今日はまたなんで喧嘩したのかしら?」
「別に」
「今回はどっちが悪いの」「音無」

一言で返す野田に苛立ちが生まれたのか、ゆりはダンッと机を叩いた。

(うわ、ゆりっぺ超怖ぇえ…)

日向はそう思うが口にはださない。これ以上空気を悪くしたくないからだ。それほど日々の二人の喧嘩が頭にきていたのだろう。まぁ、喧嘩の理由が理由だ。音無が直井に構いすぎだのコーヒーの飲みすぎだの天使に厭らしい目を使いすぎだの…何と言うか、まぁ嫌いで喧嘩している様には見えない。不器用に心配している様にしか、見えない。

「…これから今日の作戦会議をするわ。音無くんを連れてきなさい」
「俺がか?」
「リーダー命令よ、逆らう気?さ、早く」

野田は嫌そうな声を出しながらもゆりっぺにだけは逆らえないらしい。チッ、舌打ちをしながら本部を後にする。

お…あれ?…直井がいない?
まあいいか。





面倒だ。何故俺が分からず屋のためなんかに動かなければならないのだ。そもそも今回の喧嘩の原因もあいつのせいだというのに何故俺が悪者扱いされねばならんのだ。無性に腹が立って近くにあるもの思い切り蹴飛ばした。…謝ればゆるしてやらんこともないというのに。そんなことを考えながら歩いているといつの間にかいつもの自販機の側まできていた。近くにきたのはいいんだが、気配がない…?ちらりと覗いても音無の姿は無かった。
…屋上か?
冷静に考えて、屋上だという結論にいたる。面倒臭いと思いながらもリーダー命令と少しの罪悪感で屋上へ足を向けた。

「わっ──!!」

どんっ、と勢いよく体当たりされた。相手が小さかったから俺が倒れることはなかったが、当たってきた奴が後に倒れる。
あれ、こいつはいっつも音無の尻を追い回してる犬の…

「なお…なお…なおき…?」
「直井だ、愚民が!それより貴様音無さんを見なかったか?」

息を切らして探すのは俺と同じ奴だった。どうせ音無が本部をでたあと直ぐ探しにいったんだなこの犬は。知らん、と短く答えると貴様も探せと言われる。あぁ?と返すと説明を始めた。

「音無さんがどこを探しても、いないんだ。天使も見当たらない。意味がわかるか?愚民」

血の気が引くとでもいおうか。寧ろ、頭にきたのだろうか。俺は走りだした。





10.06/22、