女装スカートの夢!



 


血の気が引くのを身をもって体験した、16歳の初夏。体温が下がって冷や汗まで滲み出て来てしまった。しかし目の前の銀髪の悪魔はそんなことも気にせず手には死神の鎌を持ち俺に迫った。

「せ、先生…流石にそれは冗談がきついんじゃねぇんですかい…っ?」
「いやいや、沖田くんこれはまだ序の口だよ。それにただの罰ゲーム罰ゲーム!」

死神の鎌、もとい我が校の女子の制服を俺に突き立ててくるのは、担任の坂田なんちゃら。通称、旦那。まぁ旦那ってよんでるのは俺だけなんだけど。

って、あぁあああーっ!
説明してる間に学ランが脱がされている。気持ち悪いくらいの早業でさぁ…!

「脱がないってことは、脱がせてほしいっていう無言の誘惑でしょ?可愛い、可愛い」
「違いまさぁ!!ちょ、手と制服離しなせぇ馬鹿旦那!」

あぁ、もう何分か前の自分を殴ってでもゲームをしないように止めたいでさぁ、まったく!

『赤点、取り消してあげようか』

期末テスト、5教科中3教科が赤点だった俺。甘い言葉に誘われて素直に教室に残ったのが運のツキ。この男が条件無しに赤点を取り消してくれるはずがなかった。

『俺にトランプで勝ったらの話だけどね。あ、勿論負けたら罰ゲームだから』

まぁ、それからはご察しの通り完敗して今に当たりまさぁね、はい。

「ほら、脱いで」
「わぁーッ!自分で着まさぁ、ちょ、服引っ張んなぃでくだせぇ!!」

渋々、渋々、基本の制服を脱ぎ、マニアックな女子の制服に手を通す。後ろをむいてはいるが、旦那がにやついてるのがわかる。

どうにでもなりなせぇ!!

「…ちょっとシャレになんないね」
「〜っ!女物なんて似合うはずがないんでさぁ!脱ぎまさぁ!」

わざわざスカーフまで巻いた制服を何秒としないうちに解こうとする。しかしその手は止められた。

「いや、シャレになんないくらい…可愛いって意味」
「放しなせぇ…!ばかっ!」

なめ回すように見てくる変態…旦那の手から放してもらおうと頑張っても無理だった。
一度頭の先からつま先まで見回すと旦那はスカートを凝視した。
嫌な予感がする。
いや、嫌な予感しかしない。

「あのさ…沖田くん。ちょっとそのスカートの中を…」
「死ね」
「ひどい!」

ぴらりとスカートをめくる手をはじきおとすと旦那はヤケになった。

「だって、ねぇ?パンチラは男の夢だよ?」
「黙りなせえ」

スカートめくりを諦めたかと思いきや、その悪戯な手はスカートの中へとのびてきた。

「旦那…っやめ!」
「いいねぇいいねぇエロい」
「あ…っ旦那、触るのは…!〜っいい加減にしろぃエロおやじッ!!」

ゴン、教室に響くげんこつの音。

「…いってぇえー」
「自業自得でさぁ。反省しなせぇ」
「うー」

鞄をもち、教室を後にする。
今日はもう早く帰ろう。これ以上教室いると変な気分になりそうだ。
急ぎ足で昇降口に向かう。…視線が痛い?

………?
…あぁああああ!
俺ぁまだ女子制服のまま…!

タイミングよく鳴った胸元のポケットの中の携帯には旦那からのメール。

『制服返してほしかったらうちまできてね』

ハートつきでまあ憎たらしい。